【ゲーム感想】ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON|初めてロボットものにハマった

【あらすじ】

ルビコンという惑星にはコーラルと呼ばれる独自のエネルギー資源が眠っており、非常に有用な一方でかつて”アイビスの火”と呼ばれる大災害を引き起こす要因となっており、底知れぬ危険性を孕んでいた。

アイビスの火により失われたと思われていたコーラルだが、近年になりまだ星内に眠っていることが判明し、それを狙う巨大企業のアーキバスベイラムによる侵攻が始まる。ルビコンの土着民族で結成されたルビコン解放戦線は資源であるコーラルを奪われることに対抗すべく決起し、またかつての大災害をきっかけに星を隔離するために動く惑星封鎖機構も両陣営を監視・制圧すべく動き出すなど、戦火が巻き起こりつつあった。

そんな中、ハンドラー・ウォルターと呼ばれる男により目覚めさせられた強化人間C4-621は、どの陣営にも属さない独立傭兵としてルビコンに潜入し、彼の指示のもと撃破された機体のライセンスを奪いレイヴンと名乗りコーラルによる利権争いに干渉し利益を得ることとなる。しかし、ウォルターには金ではない何か別の目論見があるようで……というお話。

 

 

ARMORED CORE』シリーズの最新作。

シリーズは未プレイ……というか開発元のフロム・ソフトウエアの作品自体触ったことも無くて、こういう二足歩行型ロボット(なんで呼称すれば良いか分からない)ものもフリプであった『タイタンフォール2』のストーリーモードくらいしかやったことがないという完全な門外漢。丁度次やるゲームを探してる段階で話題になっていたので何の気無しに買ってみたが、これが予想以上にハマってしまった。

シリーズ恒例なのかは分からないが、画面に映るのは基本登場人物が乗るロボットのみで、喋り声と使用機体の見た目だけでキャラクターを作り上げているという渋さが良かった。日本製のゲームはキャラクターのクドさで脱落してしまうことも多いんだけど、そういうことが起こり得ないような、あえて人間としての姿を見せないという抑えた手法を取っているのが自分の嗜好に合った。それでいて結構ストーリーはアツいところがあり、雇い主であるウォルターとの関係性や、仕事を共にすることになる傭兵部隊との共闘や敵対、コーラルという物質についての真実など様々な展開を見せる物語はシンプルに面白い。細かい設定などはあえて劇中でも語られないところが多く、正直全部を理解しきれているとは言えないが、そういう余白のある語り口も好みだった。

 

フロムゲーと言えば高難易度というイメージが未プレイの自分にもあったが、御多分に洩れずなかなかの歯ごたえだった(比較すると全然簡単な方ではあるが)。

一番最初のチュートリアルミッションで登場するボスが何の変哲もないヘリに見えてめちゃくちゃ強いというところから既に洗礼が始まっており、初っ端からリトライの連続で心が折れかけた。ただ、ここは「左腕のデフォルト装備である剣で大ダメージを与えられる」「剣のような近接武器はスタッガー(スタン)のゲージを溜めやすく、相手の足を止めるキッカケになりやすい」「図体がデカい敵は懐に潜り込むと攻撃が当たりにくくなる」という戦闘の基本に気がつくと途端に難易度が下がるというまさにチュートリアルにうってつけのキャラクターになっており、脳死でやってると一生クリア出来ないが攻略法を見つければ楽勝というバランス感覚も良かった。

レベルアップなどはないので、ストーリー進行と共に増えていくパーツの組み合わせで機体構成を変えながらミッションごとに最適な機体を探っていくことになる。例えば正面のガードが異様に硬い上に機動力も高く弱点の背後を取らせない敵には垂直で落下するミサイルを撃ちまくって楽々ダメージを与えたり、空中浮遊して上を取ってくる相手には四脚というホバリングが出来る脚部パーツで空中戦を挑みアドバンテージを与えないなど、これまで見向きもしなかったパーツが意外なほど刺さったりする楽しみもあり、最強パーツを集めて終わりという形にはならずスタイルを変えていかないといけないのでマンネリ化しない。周回していると前回苦戦した敵をあっさり倒せたりして、自分のスキルが上がったことが分かるのも嬉しい。

個人的に印象深いのは、チャプター1の最後のボスであるバルテウスで、開幕ぶっ放してくるミサイルは独特の軌道で避けにくく気づいたら削られまくっている凶悪さがあり、パルスシールドを展開したり火炎放射をムチのように振るってきたりと独特の挙動にも対応していかなければいけない複雑さもあり、恐らく一番やられた敵なんじゃないかなと思う。寒々しく薄暗いロケーションに、放射状に拡がるミサイルや振り回される炎がボーッと浮かび上がる感じはどこか美しくもあり、視覚的な面でもインパクトが強いのも大きかったかも。

 

エンディングは3種類あり、どれも目的は達成するが少なくない犠牲は出てしまうというビターなもので、安易に全て解決という結末は訪れないところも抗争の無情さを描けていて自分好みだった。

どのエンディングにおいても設定が全て明かされるということはなく、3週目以降でしか見られない真エンディングにおいて物語の影で暗躍していた存在とその目的について判明するが、結局それが何だったのか、これからどうなっていくのかという根底の部分についてはこちらの想像に委ねるような形になっている。やってる最中は夢中で気付かなかったが、こうして全て終わって思い返してみるとあれって何だったんだろう?と気になるところが結構あるんだけど、そこら辺を考察する楽しみもある……ということなのかも。物語の余白を補完するような情報ログが拾えたりするが、続きものではなくバラバラに出てくるので内容を覚えていられない。ここら辺は色々とまとめてくれるサイトがあるので、ゲーム中に追いかけるというよりは後からそういうのを見て楽しむのが吉かも。

 

これまで特に理由はないが触ってこなかったフロムゲーに触れるキッカケになったし(今は『デモンズソウル』のリメイク版をやってる)、正直あまり興味がなかったロボットものについても単なる食わず嫌いだったんだなということを認識出来て、知らないからと言って敬遠せずに何でもやってみるもんだなと思える、大袈裟かもだが自分の中の価値観が少し変えられたような衝撃のある作品だった。

 

【ゲーム感想】ポケットモンスタースカーレット DLC『碧の仮面』|イジメに加担してるような気持ちになる……

【あらすじ】

パルデア地方のポケモントレーナーのための学校オレンジアカデミーで、課題である“宝探し”を進める主人公のもとに、担任であるジニア先生より林間学校のお誘いが来る。向かった先はのどかな田園風景が広がる“キタカミの里”と呼ばれる小さな地方で、そこで姉妹校であるブルーベリー学園からやってきた生徒であり、キタカミ出身でもある姉弟のゼイユとスグリと共にレクリエーションを行うことになる。キタカミには昔から鬼にまつわる伝承があり、レクリエーションもそれにまつわるものだったが、ひょんなことから伝承に出てくる鬼と思わしきポケモンと遭遇し……というお話。

 

ポケットモンスター スカーレットのDLC第一弾である『碧の仮面』をクリアした。

本編については、UI周りが前作(ソード・シールド)より劣化している点を除けばストーリーやキャラクターもシリーズ中でも高水準な作品だと思っていて、今回のDLCにも期待していたんだけど、正直なところモヤモヤが残るようなお話しだった。ポケモンのストーリーに文句言うのも野暮な気もするが、気になったので記録しておく。

 

以下ネタバレ有で感想。

※自分は前述のUI周りの問題で萎えてしまい対戦環境には一切触れていないので、あくまでストーリー周りの部分だけのお話。

 

 

 

 

 

主人公たちが追う鬼の伝承とは、オーガポンというポケモンが過去実際に関わっていた出来事についての話で、伝承上では町で暴れたオーガポン(鬼)を三匹のポケモン(現代では「ともっこさま」と呼ばれて親しまれている)が食い止めてくれたという形になっている。

しかし、実際はその「ともっこさま」がオーガポンの大事にしていた仮面を奪い去った上で一緒にいた相棒の人間をも傷つけていたため、それを取り返しに里に下りてきていたのだが、その「鬼」の怒れる様子を見た村人は恐ろしい鬼が里で暴れていたところを命を懸けて「ともっこさま」が守ってくれたと勘違いした……というのが真相。

 

主人公と共にレクリエーションで行動することになったスグリは、伝承を知りながらも、他の人とは違い引っ込み思案な自分と孤独な鬼を重ね合わせており、ある種のあこがれを抱いていた。

そんな中、主人公は村のお祭りの最中にオーガポンと偶然出会い、慌てて逃げたオーガポンが落とした仮面を返してあげるべく、たまたまその様子を見ていたゼイユと共に行動することになるが、鬼に夢中なスグリは何をするかわからないから…という理由で彼にはそのことを隠したままにするんだけど、ここが一つ目のモヤリポイント。確かにスグリには危ういところがあるのでそういう話になるのは分かるんだけど、自分としてはスグリに鬼の存在を伝えてあげたいと言う気持ちの方が強くて、ゼイユの言うことに従わざるを得ないのがもどかしかった。鬼の存在について隠されていることに気がついてしまったスグリは、自分だけのけものにされていることにショックを受けて情緒不安定になっていくんだけど、主人公もそれに加担している形になるので結構嫌な気分にさせられる。後半、スグリは鬼に認められたい一心で主人公にバトルを挑み力を誇示しようとするんだけど、ストーリーの都合上叩きのめしてあげないといけないので、何度も自分の手で彼の心を折らされるのがちょっとキツいものがある。単純にスグリが嫌なやつであればまだ納得いくけど、不器用なだけで年相応の少年でしかないのがまた辛いところ。

ストーリーは、力に取り憑かれたスグリが何やら良からぬことを考えているような描写で終わるので、どうやら後編で何かもうひと展開あるみたいなんだけど、逆に言うとこの展開に持っていくがために無理やり闇落ちさせて、しかもその原因の一端が主人公にあるというのがどうも腑に落ちない。

 

ハッキリいって『碧の仮面』のストーリーはめちゃくちゃ薄くて、たまたま林間学校のメンバーに選ばれた主人公が、たまたまそこで鬼とされる存在と出会い、たまたまその流れで「ともっこさま」が復活したので倒すことになり……と、全てが偶然に次ぐ偶然で起きていることに過ぎず、主人公も周りに言われるがまま行動するだけなので、話が盛り上がっていく感覚が全く無い。

そんな感じで物語自体に厚みがない中でキャラクターだけ立たせようとそれっぽい属性を付けていくので、大して盛り上がっていないのにやたら舞い上がってる人が完成してしまい(今回はスグリ)、上滑りした印象を受けてしまう。これは過去作でも似たような現象が起きていて、具体的に言うと『BW』のNとか『XY』のAZなんかがそれに近い意味ありげなだけのキャラクターで、ゲーフリの悪い癖だと思ってる。

これを回避するにはもっと丁寧に物語を積み上げていくしか無いと思うんだけど、そうなってくると障害になるのがポケモン特有の自我の無い主人公のキャラクターで、時折意思表示できそうな選択肢が出てくるが、それも「はい」か「YES」かみたいな選ぶ意味のない無駄選択肢だったりして、自分で物語を動かしているという気がせず、結局言われたことをやってるだけの話になってしまう。また、メンヘラ気質のスグリがオーガポンに好かれないのは分かるが、お面を拾ってあげただけの主人公が選ばれし者みたいに持ち上げられるのも違和感が強くて、自分の分身のはずなのに不当に人格者みたいに扱われるのが段々腹立ってくる。

 

『剣盾』でもDLCはそんなにボリュームがあるわけでは無かったし、対戦環境のテコ入れついでに物語があるようなものだとは思うんだけど、とにかくスグリを追い詰めるためだけの話に自分が付き合わされるという構図が嫌で、全く乗り切れなかった。

日本の田舎町を細かいディテールで再現した町並みや(町が一つしかなかったのも気になるが)、林間学校や夏祭りというシチュエーションからもっと牧歌的なものを想像していたので、そこら辺の食い合わせの悪さも残念だった。後編で何が起こるのかは分からないが、スグリが救われるような話になってれば良いな。何だったらオーガポンも譲るし……。

【ゲーム感想】7 Days to End with You(2022)|言語を理解するというパズルゲーム

【あらすじ】

ある日ベッドで目覚めた主人公は、全ての記憶を失い自分の名前すら分からない状態だった。目の前にいた赤毛の人は、その状況を理解し言葉を教えてくれるなど献身的に看護をしてくれるが、主人公の体調は日に日に悪化していく…というお話。

 

 

一見するとただのビジュアルノベルゲーな今作最大の特徴は、画面上に表示される文字(セリフや書き文字など)がすべて架空の言語で表示されており、ただ見ただけでは何のことを表しているのか全く分からないというところ。最初は目の前にいる人が何を話しているのか全く分からず、ただただテキストを読み飛ばしていくだけの状態になってしまう。

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↑こんな感じ

 

ただし、そんな状況を理解してくれている人…仮に“赤髪”とすると、その赤髪さんは主人公が指し示した物の名前や用途について説明してくれて、その内容を元に文字ごとの意味について推察していくというのがこのゲームのメインコンテンツになっている。

例えば、本棚の中身を調べると絶対に出てくる単語は「本」だなとか、毎日寝るときに話しかけてくれる単語は「おやすみなさい」かな……とか、ある程度あたりをつけながら言葉の意味を埋めていき、主人公の身に何が起きたのか、赤髪さんは何を目的として主人公を世話しているのかを明らかにしていくことになる。

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↑一度意味を入力するとふりがなとして現れるようになる

 

タイトル通り7日間だけのお話で、日数が過ぎると一旦物語は終わりになる。普通にやっているだけだと釈然としないオチを迎えるが、マルチエンディング方式になっていて、期限内に特定の行動を起こし、なおかつ赤髪さんとの会話でどんな言葉を選択するかにより分岐する様子。ゲーム内のヒントだけで全ての言葉を解読するのはかなり難しく、最後の最後まで文章の意味がわからないままなところもあったりするが、それでも意味のあるエンディングに辿り着くことは出来る。かなり精密に言葉を選ばないと見られないエンディングもあり、正直自力では全部見ることはできなかった。

最後の最後まで明確な説明があるわけではなく、真相まで辿り着いてもなおこちらに解釈を委ねるような展開になるので、言葉のパズルを解いていった先に何か明確な解答があるわけではないというのが評価分かれそう。言葉が集まり今まで分からなかった文章の意味が急に分かったりする瞬間はなかなか気持ち良いが、それが正解であるという手応えは無いので、物足りなさを感じてしまったのも確か。

 

個人制作のゲームらしく、やれることはかなり限られるのでボリューム感はそこまで無かったが、まるで未知の言語を初めて発見した人かのように言葉を解き明かしていくというのは、今までにない体験で面白かった。

【ゲーム感想】ピクミン4(2023)|今一番”ちょうどいい”ゲーム

【あらすじ】

未知の惑星「PNF-404」で遭難し脱出不可能になったパイロットのキャプテン・オリマーは、無線で宇宙に向けてSOS信号を発信するが、助けに向かったレスキュー隊までもが原因不明のトラブルにて遭難してしまう。唯一の希望は、新人ということで出動せず待機していた主人公だけだった…というお話。

 

 

個人的には初めての『ピクミン』シリーズ。GCの1~2も気になってはいたが、妹がいてあまり一人用ゲームを買うのを良しとされていなかったのと、シビアそうな世界観にビビって手を出さずじまいだった。ただ、そんな初心者でも全然問題ないような親切設計で、パズルや戦闘でもたもたしているとヒントをくれるし、お助けキャラである犬?のオッチンのおかげで移動や戦闘もかなりやりやすく、ほぼストレスなく進められるのが良かった。取り返しがつかない惨状に陥っても「巻き戻し機能」で数分前に戻せるので、トライ&エラーがやりやすいのも嬉しいところ。

敵となる原生生物の生態が様々で、効率的に倒すためにはピクミンの特性を活かして上手いこと攻撃することが必要な一方で、ある程度の犠牲を厭わないのであれば割とごり押しでなんとかなるというバランスも良い感じ。1匹もピクミンを死なせないというのはかなり難しいので、無残に食われたり押しつぶされていくのを目の前に対処するしかない…という状況がよくあるというシビアさは予想していた通り。こういう無慈悲な感じ、GC初期の頃の時代のゲームらしい殺伐とした空気感ほんのり残っているような気がする。

 

ミニゲームとして用意された「ダンドリバトル」「ダンドリチャレンジ」「夜の探索」も楽しくて、決められた時間内でいかに効率よく仕事をこなせるかという、名前の通りの「段取り力」を試される。「バトル」は物資の奪い合いというパーティーゲーム的な対戦要素、「チャレンジ」は詰将棋的にルートを開拓しながらピクミンに仕事を割り振っていくパズル要素、「夜の探索」は所定のエリアを敵から守り続けるというタワーディフェンス的要素がとそれぞれ違った楽しさがあり、どれも熱中してしまう。

 

難点を挙げるとすれば、エリア間の移動のロードが結構長いところくらいかな。割と短いスパンで洞窟に入ったりするので結構待たされることが多い。ただ、このロード中のTIPSに攻略の大ヒントが書かれていたりするので、この長さに助けられることもあったりするが。

 

個人的に、このピクミン4のボリューム感がかなりちょうどいいな、と思った。本編だけでも2~30時間程度遊べて、上述のミニゲームやエンドコンテンツのやりこみ要素も含めたら更にじっくり遊べるんだけど、ゲームの終わりは目に見えている感じ。最近の大作ゲームはオープンワールド形式が多くて、サブクエストとか収集要素が無数にあり、それはそれで楽しいんだけど、それを網羅するのは飽き性の自分には難しいので、手が届く範囲にすべてがあるというのがなんか嬉しかった。

かなりハマったので今switchで出来る1~3にも手を出してみたいなとは思ってるんだけど、特に1はかなり難易度高いと聞いて若干しり込みしている。僕にオッチン無しで戦うことなんて可能なのか……。

【ゲーム感想】ホグワーツ・レガシー(2023)|魔法ワールドの再現度は文句無しのクオリティだけど……

【あらすじ】

ハリー・ポッター』シリーズと同じ世界観で、ちょうど本編の100年くらい前の世界で、5年生でホグワーツ魔法学校に転校してきた主人公は、付き添いのフィグ先生と共に“古代魔法”と呼ばれる不思議な力の痕跡を目撃し、そして自分にもその才能が宿っている事を知る。そんな古代魔法を深く知る“守護者”によりその正しい使い方を教わることになる主人公だったが、強大な力を狙うゴブリンのランロクやその協力者である魔法使いのルックウッドの魔の手が迫る……というお話。

 

【良かった点】

1800年代が舞台ということで、当然見知ったキャラクターはほとんど生まれてもいない時代だが、逆に原作の話と変に絡まない時代を描いてくれたことで、ハリー達の話とは関係ない自分の物語であるというところがはっきりと感じられるのは良かった。

ホグワーツやホグズミードなど、映画や原作版で断片的に見聞きしていた場所を歩き回れるという感動は大きかった。教室の位置関係ってこんな感じになってるのかーとか思いながらブラブラ歩いてるだけでも楽しい。オープンワールドとしてはそこまで大きいフィールドでもないが、ホグワーツの作り込みだけで元が取れてるくらいの完成度なので広さに不満は感じず。ファストトラベルもいつでも出来るし、箒でかっ飛ばせば遠いところでもすぐに着くしで移動のストレスがほとんどないのも良かった。

戦闘システムも最初はやや複雑に感じるが慣れればそこまで難しくなく、上手いこと敵を手玉に取ってコンボを決められると楽しい。攻撃呪文に爆発系が二つもあったり、拘束系呪文があまり見た目上違いが分かりにくかったりというところは気になるけど、思わぬ呪文が特定の敵に特攻になってたりと、それなりに考えられているとは思う。

 

【気になった点】

古代呪文を巡るメインクエストは、謎の多い最初は引き込まれるが、やたらと回りくどい手順を踏んでなかなか核心に近づいていかない上に、色々と気になる点を残したままフワッと終わってしまうので打ち切り漫画みたいな消化不良感がある。因縁の相手であるゴブリンのランロクや、ことの発端である魔女イシドーラなど、掘り下げればもっと面白くなりそうなのに全然踏み込んでいかないのが勿体無い。何故か同じムービーを二回見せられたりと、ツメが甘いんじゃないかなと感じる場面もチラホラ。

そもそも主人公の経歴が全然わからないというところも問題。5年生から入学するという変わった経歴は過去に古代魔法を使うことが出来た人と全く同じであり、何らかの繋がりを示唆されるが結局物語上は何の意味もないし、家族構成や出身地も何も明かされないので、なんか分からんけど年取ってからホグワーツに来た奴というくらいの情報しか得られず不気味ですらある。例えば『スカイリム』みたいに、自分の設定を細かく決められる主人公であればオリジンが不要であるというのは分かるんだけど、今作はキャラメイクこそ出来るがストーリー分岐はほとんどないので、ゲーム開始以前の様子を一切描写しないことに意味がない。メタ的に考えれば、一年生から始めてしまうと設定的にホグズミードに行けなかったり覚えられない呪文があったりして制限が多いので、五年生という設定にしたのは正解だと思うんだけど、そこの理由付けをもうちょっと頑張って欲しかった。

“許されざる呪文”を使えるのも今作の特徴の一つだが、使うだけで罪人になるような極悪な呪文も何のお咎めもなくただ使えるだけというのもなんか引っかかる。闇堕ちルートみたいなものがあれば良かったんだけど、せいぜいクエストの選択肢でイヤミな返しをして相手を不快にさせるくらいのことしか出来ないので、魔法界を救おうとする正義の男が裏では闇の魔法を連発するヤバい奴というネジくれたキャラクターになってしまう(ロールプレイを大事にするならそもそも覚えないという選択肢もあるが)。

 

【まとめ】

ホグワーツを始めとした世界観の作り込みに関しては文句無しの出来栄えで、それだけである程度満足出来た事は確かなんだけど、主人公を始めとしたキャラクター達やストーリーの掘り下げ不足で消化不良に感じてしまったのが勿体無いところ。そこら辺のこだわりの無さは良くも悪くも洋ゲーならではと言う感じもするが、既に映画や小説でたっぷりドラマチックな物語が語られているシリーズなので、ゲームでも同じような体験が出来るかも?と変にハードルが上がってしまっていたのかもしれない。

元々そういう形で作る予定だったのか、近年のやらかしの影響なのかは分からないが、原作者のJ・K・ローリングは全く関わっていないようで、やっぱりシリーズの核となる生みの親が不在であるというのも大きいのかな。

 

【ゲーム感想】ディスコ エリジウム(2019)|記憶喪失刑事の自己再生追体験

 

【あらすじ】

記憶喪失状態でホテルの一室で目覚めた男は、周りの人の話から自分が刑事であり、ホテルの裏で首つり死体が発見された事件について捜査しに来たことを知る。一緒に行動することになった相棒のキム・キツラギ刑事と共に、港湾労働者組合が牛耳る町・マルティネーズを駆け回ることになる……というお話。

 

【ゲームについて】

システム

エストニア産のロールプレイングゲーム

最初に知性、精神、肉体、運動能力のアビリティに決められた数値を割り振り初期ステータスを作ったり、劇中の選択肢の一部はダイスロール(という体の乱数)で成功・失敗が決まったりと、TRPG的な要素が強い。

アビリティはそれぞれが主人公の能力にそのまま直結していて

◆知性⇒世界に対する知識や芸術的感性、論理思考など

◆精神⇒意志の強さ、共感力、コミュニケーション能力など

◆肉体⇒物理的ダメージへの強さ、酒・ドラッグへの興味、マチズモ的思想など

◆運動能力⇒銃・スリのスキル、咄嗟の身のこなしのような瞬発力に関する能力

を表している。

ここでどうポイントを振るかが主人公の人格形成に大きく関わっていて、自分はデフォルトで用意されていた「知性は高いが人付き合いは苦手」というアーキタイプにした結果「知性5、精神1、肉体2、運動能力4」という能力になった。これは他人の言動から物事を推理したり、世界に対する知識を捜査に役立てたりすることが出来る一方で、町のクソガキに罵られただけで心がおれてゲームオーバーになったり、出来心でポストを蹴っ飛ばしただけで致命傷を負ったりと、異常に打たれ弱い頭でっかちのへぼ刑事になって面白かった(精神面や肉体面はスキルアップや回復アイテムで簡単に補強できるので後半はそこまで気にならない)。

 

 

【キャラクター】

主人公

主人公は前述の通り記憶喪失の男で、最初は自分の名前すら分からない状態。捜査の過程で自分の失われた記憶を思い返していくことになるんだけど、それがそのままキャラビルドに繋がっていくのが面白かった。このゲーム、とにかく選択肢が豊富なので、すぐに謝る気の小さい刑事、酒とドラッグのことしか頭にない享楽刑事、ゴリゴリの共産主義者、自分の事をスターだと思い込んでいる精神異常者など、どんな人間にでもなれるのが良いところ。

JRPGなんかでは特に「はい」か「いいえ」、もしくは「はい」か「うん」みたいな何を選んでも何の影響もないという虚無の選択肢を選ばされることが多いが、今作はすべての選択が主人公の経験・思想として蓄積されていくのが、自分の操作がキャラクターを作り上げているという没入感に繋がっていく。

さらに、先ほどのスキルについてもただの能力値というだけでなく、それぞれが異なる人格を持った存在として主人公にことあるごとに話しかけてくるという特徴があり、これがこのゲーム最大の特徴といっても良いかもしれない。4つのアビリティごとに6つのスキルがあるので、全24個もの異なる思考があるということ。

例えば「知性」アビリティの「百科事典」スキルはゲーム内世界の設定について詳しく固有名詞についての解説をしてくれるし、何かをスリ盗りたいときは「運動能力」のスキル「手さばき」が的確なタイミングを教えてくれるなど、特に高く振ったスキルは色々なところで役立ってくれる。全く異なる性格が同居していることで、偶にスキル同士で意見が食い違い、主人公そっちのけで喧嘩が始まったりするのも面白い。

ある程度枠組みはあるものの、自分の好きなようにキャラ付けすることが出来るという正しい意味での「ロールプレイング」が出来る主人公で、自分は正義寄りの選択肢を選んでいたが、思いっきり嫌な奴を貫き通したりするのも面白そう。

 

相棒 キム・キツラギ

魅力的なキャラクターの多い今作だが、やはり相棒のキムが一番良いキャラクターだった。

見た目はアジア系で眼鏡のひょろながおじさんという感じで、第一印象はいまいち冴えない感じがしたが、時にめちゃくちゃなことをやり始める主人公をたしなめつつも騒ぎに乗っかってみたり、自分の趣味の領域の話になるとちょっと饒舌になっちゃたりと、真面目キャラでありながらもそれ一辺倒ではない人間臭さが垣間見えるところが魅力的。この手のキャラは解説役に回りがちだが、その役目は自分の思考をはじめとした会話外の部分で賄われているので、説明臭くないしっかり血の通った一人の人間として存在しているというのが良かったのかも。

このゲームで最も緊張感のある、事件のターニングポイントとなる場面で現れるキムに関するある選択肢がこちらを泣かせる実に味わい深いもので、あくまでシステムとしてそっけなく書いてあるだけなのもまたニクい。

 

【雑感】


プレイ時間は寄り道含めて30時間くらいだったが、その大半がテキストを読んでいる時間だったと言えるくらい膨大なテキスト量で、しょっぱなから固有名詞や難しい言い回しも多いことから異様なとっつきにくさがある。会話自体は崩した表現も多く茶目っ気もあるので、文字の多さに慣れれば読むのは楽しいんだけど、合わない人も多そうではある(自分もほとんど本読まないので序盤は結構しんどかった)。

世界観はかなり作りこまれており、舞台となるマルティネーズ以外の国々がどのような歴史をたどってきたのかなどが細かく語られるが、その全てが事件にかかわってくるかと言われるとそうでもないので、設定の膨大さと事件のリンクに期待しすぎてしまうと若干肩透かしかも。開発者のロバート・クルヴィッツ氏は元々ゲーム製作者ではなく小説家で、今作と自身の別の作品の世界観を共有しているようなので、あくまでロバート氏の脳内世界で起きた一つの事件…ということみたい。それならいくらでも話を拡げられそうじゃんと期待したが、どうやら彼と会社がもめて裁判沙汰になったりしているようなので、続編は絶望的かもしれないのが残念。

付け焼き刃では無い膨大な設定が背景にあり、自分がその世界の一員になったかのように没入できる作品で、何もかもが明らかになるわけでは無いというボリューム感もちょうど良かったかも。『デトロイト』や『ラスト・オブ・アス』をプレイした時、まるでハリウッド映画の世界を体験できたかのような興奮があったんだけど、今作はそれらとはちょっと違うヨーロッパのちょっと変わった映画の世界観に入り込んだような感覚があって、そこら辺のちょっとニッチな雰囲気もまた面白かった。