【ゲーム感想】splatoon3 DLC『サイドオーダー』|スプラ×ローグライトという新しいジャンル。面白い試みで楽しめたがもっと良くなる余地はありそう。

splatoon3のDLC第二弾。第一弾が拠点マップの衣替えだけだったので、ようやくメインがやってきたという感じ。ストーリー的には『splatoon2』のDLC『オクト・エキスパンション』の続編になっていて、主人公はタコの8号(通称:ハチ)で、深海メトロにて“ネル社”の陰謀を阻止した後のお話しになっており、2~3のヒーローモードでの出来事などは全く関係ない。

 

全体的な評価としては、面白いがもっと良くなる余地は見えてしまう、という感じ。

これまでの一人用モードは自分でステージを選択してクリアしていくものだけだったが、今作では塔を登っていくというていでワンフロアずつ攻略していく形になっており、ステージはランダム抽選で失敗したら1からやり直しになるといういわゆるローグライト方式というスプラとしてはかなり斬新な試み。「チップ」という強化パーツを使って自身の能力値を高めたりお助けアイテムを出やすくすることで有利に進めることもできるが、クリアするかゲームオーバーになった時点でそれらはすべて失われてしまう。ただ、救済措置もあり、塔内で集めたアイテムがリザルトで「シンジュ」という通貨に換算されて、それを使ってリセットされない基礎能力を高めることでクリアしやすくすることもできる。デフォルト能力だとなかなかの難易度なので、物足りない人は強化しないという選択肢を残しているのは良い塩梅だなと思った。

何度もトライを繰り返すためか、これまでに比べるとかなりステージはコンパクトになっていて、上手いこといったら十数秒でクリアできてしまうものもあったりする。中には『オクト~』でもなかなか難易度が高かったボール運びのお題もあるが、ステージ外への落下が無くなっているのでかなり軟化しているなど、良くも悪くもシンプルなつくりと言える。ステージが狭いので高難易度になってくると敵がひしめき合うことになるが、これはサーモンランの要素も取り入れた結果なのかなという感じがした。言われてみればサーモンランって一人用向きの題材だし、今までなかったのが不思議なくらい。

武器の強化という要素はこれまでもあったが今作ではそれを極端にしていて、ビルド次第では爆速で走り回って敵をなぎ倒すフデとか、一瞬でチャージ完了してぶち抜きまくれる無敵のチャージャー等、対戦ではお目にかかれないチートみたいな武器が出来上がっていくのが楽しい。これもサーモンランの「クマブキ」に近いものがあるが、あれ以上に尖った性能に出来るのが楽しい。お供してくれる「ヒメドローン」の能力を上げまくったり、敵のドロップアイテムを増やして常に有利な状況にしたりとビルドの幅はある程度あるが、基本的にはその武器の長所を伸ばしていく強化にするのが一番楽しいかなと思った。これまでの一人用モードは一本道のストーリーがありそれほどリプレイ性のあるものではなかったので、試行錯誤しながら楽しめるという要素があるだけで新鮮で面白かった。

 

雑魚敵の種類に関してはそこそこいるが、ボスが3体+ラスボス1体というのはやや少なく感じる。武器が強くなるからこそいろいろな戦術を試したくなるし、使いまわしとかでも良いからもう少し増やしてくれたら嬉しかった。ステージのクリア条件も「敵を召喚するポータルの破壊」「エリア奪取」「プロペラヤグラの運搬」「ボール運び」「逃げる敵の撃破」の5種類で、もう少し幅が欲しかったところ。ラスボスも攻略法さえつかめればそこまできつくないので、もう一個踏み込んだ強敵・難ステージが遊べるようなエンドコンテンツがあっても良かったかなとも思う。

前作『オクト・エキスパンション』はvaporwaveなどのサンプリング的文化を取り入れたかなり特殊な世界観で、深海メトロ内の奇妙な住人達の佇まいも相まって退廃的な雰囲気がありかなり良い空気感だったんだけど、今作では極端な“秩序”を表すかのような無機質な世界になっており、ステージやNPCなどの造形に遊び心が感じられなかった(ステージの背景は実は結構凝っているんだけど、敵がわんさか出てきて忙しい時間が多いので、意図的に入り口で立ち止まったりしないと眺めている余裕がない)。

ストーリーもやや薄味で、全容は一週目で大体明らかになったのちに周回ごとに徐々に骨組みが明らかになっていく形だが、あくまで舞台となる世界だけの話に終始し、『オクト・エキスパンション』の後日談的側面が強くあまり広がりがない。結局大きな出来事が起こるわけではないので、他の一人用モードと比べるとこじんまりとした印象を受けた。

 

単なる拡張版ではなく全く新しい体験としてスプラトゥーンの要素をローグライクとして落とし込むという発想は面白いし、実際上手いこと融合して良い作品にはなっているんだけど、だからこそもっと叩いてより良いものになってほしいという欲求が生まれてしまった。例えば『4』とかでパワーアップした同モードが『サーモンラン』みたいに常設で遊べたりしたら嬉しいけど……さすがに望み過ぎかな。

【ゲーム感想】Bloodborne|作り上げられた強固な世界観と、それを押し付けてこない謎めいた佇まいがたまらない。ゲーム性も良くて文句なし。

アーマードコア6』からフロムソフトウェア作品に興味を持って、リメイク版『デモンズソウル』を経て『Bloodborne』をプレイしてみた。リメイク版『デモンズソウル』は原作にほぼ忠実らしいが製作は外注みたいなので、本流の“ソウルボーン”シリーズは初ということになる。

 

経験値とお金が同じ単位で括られており倒されるとその場に落としてしまうとか、オンラインプレイをしていると他プレイヤーが残してくれたメッセージをヒントに進められるとか、ざっくりとしたシステムは『デモンズ』と似たところがありとっつきやすかった。

ただ、操作感はだいぶ違い、特に戦闘面では盾で敵の攻撃をはじきながらこちらの攻めの機会をうかがう『デモンズ』とはうって変わって、基本的に防御という選択肢は無く相手の攻撃をステップやローリングでよけながらスキをついて攻め続けなければいけないので、雑魚敵のと遭遇でも常に緊張感があった。防具も種類こそあれど性能の差は微々たるものなので、重装備で固めるということも出来ず、必然的にダメージを受けやすくなるが、一定時間内に反撃できれば「リゲイン」というシステムである程度回復を行うことが出来るので、まさに肉を切らせて骨を断つみたいなプレイスタイルが要求される。この血で血を洗うような戦闘が、「血」が重要な要素となる今作の世界観とマッチしていてよかった。

武器についても良くある剣や斧とは少し違う「仕掛け武器」になっていて、すべての武器が2種類の形態をとれるというのも個性的。振りが早く短いノコギリとリーチが長く振りが大きい鉈形態を切り分ける「ノコギリ鉈」、軽いステッキを変形させるとノコギリ状の鞭になる「仕込み杖」、直剣に巨大な鞘を装着して大剣に変化させられる「ルドウイークの聖剣」など、どれも武器の性質がガラッと変わるような変化を見せてくれて、変形するときの「ガシャン!」みたいな無骨な音も含めて少年心をくすぐられる格好良さがある。個人的には初期武器でもあり手数と威力が優秀な「ノコギリ鉈」、癖のない動きで相手を怯ませる重打が出せる「ルドウイークの聖剣」をメインで使っていて、DLCゾーンに行ってからはチェーンソーみたいに回転する丸鋸が先端についた「回転ノコギリ」、敵モンスターであるアメンドーズのもげた腕というとんでもない設定でなぜか壁抜けして攻撃が出来る「小アメンの腕」をメイン武器として切り替えながら使っていた。

前述の通り雑魚敵もなかなかの手ごわさがあるが、ボスは輪をかけて難しいところがあり、基本的に遠距離からちくちくやるような戦法は不可能なので、どうしても相手の攻撃射程内に潜り込まなければいけず、自分の何倍もの体躯がある敵に死ぬ気で挑まなければいけないという恐ろしさがある。特に獣系のボスは動きも素早く攻撃範囲が大きい上に、序盤で戦う機会が多くてなかなか苦戦させられた。一個罠だなと思ったのが、ゼルダみたいに敵にロックオンできる機能があって、自動でカメラが追いかけてくれるので便利ではあるんだけど、ロックオンしてる間はダッシュやローリングが出来なくなるという仕様があり敵によっては逆に攻撃が除けづらくなってしまうことがある。特に序盤の壁になったのが「黒獣パール」で、めちゃくちゃに動き回ってカメラがぶん回されるばかりか、身体がガリガリすぎて攻撃が空ぶることが多くかなり苦戦した。ロックオンのもう一つの落とし穴として、視点が固定されることにより攻撃の方向もある程度決まってしまうので、自分の思うような位置に攻撃できなくなることがあり、手足などを重点的に狙いたい敵にはあえてロックオンせずに自分でカメラ操作をした方がやりやすい。パールはそういうロックオンすると戦いづらいという仕様の穴を絶妙に突いた設計になっていて、ある意味チュートリアル的な存在だったのかも。他のボスでも、困難絶対勝てないじゃんと思うようなやつにもただ同じ方向にステップするだけで驚くほど簡単になったりする等どこかしらに隙があり、厳しい戦いでも攻略の楽しみがあった。

ただそれでも戦闘に癖があるのは否めないところで、早々にあきらめる人が多いのか最初のボスである聖職者の獣orガスコイン神父の討伐トロフィーが自分のクリア時点で45%くらいで、ハードルの高さを感じさせられる(ボス戦というよりそこにたどり着くまでの市街地で心折れる人が多いのかもだが)。

因みに、自分が苦戦した順をTier表にしてみるとこんな感じ。

こう見ると、ストーリー上絶対に戦わなければいけないボスよりも、DLC含め寄り道にいるボスの方が手ごわく設定されているのかなと思った。A以上に入れて戦闘必須なのは「再誕者」のみだけど、こいつはちょっかいだしてくる周囲の取り巻きを倒せることにしばらく気付かず戦ってたのが苦戦の要因だったので、単体での強さで言ったらもう少し下がるかも。

聖杯ダンジョンのボスは大体厄介で、大小問わずモーションが独特で読みづらくて攻撃をよけるのに苦労する場面が多かった。アメンドーズなんかは本編の「悪夢の辺境」では訳も分からず足元の安置に入り込めてしまい初見突破できたんだけど、聖杯ダンジョンである「呪われたトゥメルの冒涜(HPが強制的に半減)」に出たときは一撃の痛さも相まってかなり苦戦させられた。中でも一番嫌だったボスはトゥメルの末裔で、見た目はただのちょっとでかい爺という感じなんだけど、異様に早いモーションと見た目以上に長い判定で曲刀を振り回し、当たらないように距離を取ると壁を貫通する上に多段ヒットで体力をゴリゴリ削られるブーメランを無限に投げてくるなど隙が無さすぎる。出現場所がこちらの攻撃と回避を邪魔する柱がたくさん立っている狭いエリアで、思うように動けずなぶり殺しにされ続けて狂いかけた。多分リトライ回数で言ったらこいつが一番なんじゃないかと思う。

ボスじゃないが、DLC漁村のモブ敵である巨大魚人もインパクト大。雑魚敵扱いなのでリスタートのたびに復活するのに規格外の強さで、インチキじみた範囲と持続時間の突進攻撃と、致死量のダメージを受ける掴み⇒丸呑み攻撃がきつ過ぎて何度も辛酸を嘗めさせられた。でかい図体のわりに銃パリィが良く効くのでそれに気づいたら安定したが、こんなのを道中に配置するなんて正気かと愕然した。

 

プレイの面だけで色々書いてしまったが、世界観もまた素晴らしかった。

主人公は訳も分からず世界に放り出され、とりあえず「獣狩りの夜」を終わらせることが目的であるということを何となく教えられて話を進めていく。街をうろつく敵は半分獣人化したかのような凶暴な者ばかりで、大体のボスも巨大化したオオカミの様な姿をしており、プレイヤーはその名の通り「獣狩り」をすることになる。街並みも含めてどことなく吸血鬼や狼男のようなゴシックホラー的な要素を強く感じさせられるが、一番目の目的地だった聖堂街の大聖堂に陣取るボス「教区長エミーリア」を倒してから徐々に様子がおかしくなってくる。

決定的なのはその次のエリアである「禁域の森」で、それまでのある程度整った街並みから一転、道らしい道の無い森の中を進んでいくと、人間の身の丈に合わない巨大な墓石が乱立していたり、蛇の様な生き物を頭から生やした人間がうろつくなど雰囲気が様変わりしてくる。一番驚かされたのは森の奥の方の脇道に立ち寄ると突然全身真っ青のグレイ型宇宙人の様なものが現れるところで、その別のゲームからやってきたんじゃないかというほどのあまりの世界観の違いに衝撃を受けてしまった(そして謎の神秘攻撃で一瞬で殺される)。ここから徐々にゲームの方向性自体が変わっていき、マップ間の移動が物理法則を無視したかのように繋がりが無くなり奇妙なところに飛ばされたり、敵もドロドロに溶けた人間やこの世の者とは思えない姿をした虫など薄気味悪い造形のものが増え、何が現実で何が幻なのかが曖昧になってくる。ここで大聖堂で見た蛸のような頭をした謎の石像や、宇宙人の様な敵の存在、冒涜的ともいえる恐ろしいボスの造形が頭の中でつながり、今作の本質は『クトゥルフ神話』のような“コズミックホラー”であることが分かってひっくり返りそうになった。それまで訳も分からず溜まっていた「啓蒙」のステータスがいわゆる「SAN値」に近いというのもそこでようやく分かり、何やらぼんやりしていたものが急にハッキリと見えてくるという、深入りすることでおぞましい本質の部分が見えてしまうというクトゥルフっぽさをプレイヤーである自分自身が体験させられる感じが上手くて舌を巻いた。『デモンズソウル』が割と王道な剣と魔法のダークファンタジーだったし、そんなトリッキーなことをしてくるだろうとは夢にも思わなかったのでやられたなーと思った。

とはいえ、劇中では明確にそういう世界であるという説明があるわけではなく、アイテムのフレーバーテキストやほんの少しのムービー、断片的な会話などからある程度推察していくしかない。『デモンズソウル』も全体的なストーリーは明確に語られるものではなかったが、今作は輪をかけて描写が無く、クリアした後に振り返ってみても結局主人公が何を成し遂げたのかが良く分からないレベル。調べると山ほど考察系サイトが出てきて、色々な見解を見ることが出来て楽しい。説明不足と言われればそうなんだけど、しっかりと作りこんだ上であえてその核心を見えないようにして、細かい要素だけを小出しにすることでプレイヤー側に考える楽しみを与えてくれるのが良い。映画とかでもそうだけど、1から100まで説明されないというのは作り手側がこちらを信頼してくれいているような気がして嬉しい。

何故こんな世界になっているのか?というところはDLCのエリアに足を踏み入れてようやく輪郭が見えてくるが、ここら辺も核心に迫るにつれてどんどん狂気がむき出しになっていき、精神力が削られていく感じがした。『実験棟』は気が狂った患者型エネミーたちが不気味で、話が出来るタイプのモブも全く会話が出来ないので頭がくらくらしてくるし、次の『漁村』は単純に自分が水辺が苦手ということもあり、フジツボがびっしり生えた廃墟など生臭くて不潔そうなロケーションが単純に嫌だった。しかし、様々な狂気じみた地を巡った挙句、最果てに待ち受けているステージの名前が『漁村』という素っ気無さなのもまた痺れるね。

 

前述の通り最初のボスのトロフィー取得率はだいぶ低めだが、プラチナトロフィーは比較的取りやすくなっていて(取得率6%くらい)、初めてトロコンまでしてしまった。

(厳密に言うと『UNDERTALE』でも取ってるんだけど、あれはストーリー一周するだけで勝手に取れる仕様なのでノーカン)

周回は必要だけど慣れれば1~2時間くらいでエンディングまで行けるし、○○を何回しろとか果てしない数のアイテムを集めるみたいな面倒くさい収集要素とか、時限式ミッションみたいなものが無いので心折れずに行けた。

やりこもうと思えばまだ聖杯ダンジョンが残っていたりもするんだけど、他にもやりたい作品が渋滞してきたのでとりあえずここで一区切り。最初はDLCも買ってなかったし、トロフィーを集める気も一切なかったのにすっかりのめり込んでしまった。まだ同系統の『ダークソウル』も『エルデンリング』もあるし、開拓していくのが楽しみだ。

【ゲーム感想】SILENT HILL: The Short Message|テーマとゲーム性の融和は良かったと思うが……。

【あらすじ】

高校生のアニタは、友人のマヤに呼ばれて廃墟と化したマンションにやってくる。しかし、どこにもマヤの姿は無く、建物をさまよう内に奇妙な現象に遭遇する…というお話。

 

これまで公開されていた『2』のリメイクなんかとは別に、突如発表・無料配信されたサイレントヒルシリーズの最新作。正式に『サイレントヒル』の名を冠した作品としては、なんと2013年にPSvitaで出たものが最後らしく、11年も間が空いていたらしい。製作会社は日本のヘキサドライブという会社。

無料配布ということもあってボリュームはそこまで大きくなく、自分は2時間半くらいでクリアした。サクサク進めたらもっと早いはず。

 

若者の承認欲求・いじめ・ネグレクトなどが大きく取り上げられ、SNSコロナウイルスの流行も話に組み込まれているなど、全体的にかなり現代寄りになっていて、これまでのシリーズとはだいぶ趣が違う。トラウマに作用して変化する地形や不気味なクリーチャーといった基本は抑えているが、あの独特のサビっぽさ、血なまぐささはそこまででもなかったかな。

 

サクッと遊べてよかったと言えばよかったんだけど、大満足かと言われると微妙かも。

前述の“サイレントヒルっぽさの少なさ”については今作の個性であるとして飲み込めるんだけど、いじめとかネグレクトのような重いテーマを扱っているにもかかわらず表現がちょっと典型的すぎてチープに感じてしまった。このサイズ感で深堀りするのは難しいかなとも思うんだけど、どこかで見たような既視感のある展開でしかないなというのが正直なところ。ゲームの設定とテーマの融和性は良かったと思うので、もうちょっとがっつり練りこんだストーリーが見てみたかった。

後、演出面でも気になるところがあり、主要人物であるマヤ(日系人)が出てくるムービーは全部実写映像になっているんだけど、日本人の役者さんが演じており、口元を見るとあからさまに日本語をしゃべっているのが見て取れる(音声は英語吹替)。このゲームの舞台はドイツで、主人公も恐らく現地の人なので会話上マヤだけ日本語で話してるのは変な気がするんだけど、特に説明はないまま。恐らく予算的な問題でマヤのキャラクターモデルが作れず(ゲームで出てくるのは主人公アニタとクリーチャー1体のみ)実写で撮影し、わざわざ英語やドイツ語を喋らせる手間も取れなかったということなんだろうけど、常に違和感が拭えなかった。

LINEみたいなチャットでやり取りする場面も多いが、スマホ画面をババンと出されると急に現実に引き戻されてしまったみたいで、なんだか興を削がれてしまった。

 

個人的に、ホラーはドライであればあるほど良いと思っているので、終始湿っぽい話続きの今作はあまり性に合わなかった。これぐらいの規模感で、乾いた恐怖をとことん味わうことの出来る作品というと、自分はプレイ出来なかったがそれこそ『P.T.』なんかは理想に近い形だったかも。

【ゲーム感想】ポケットモンスタースカーレット DLC『藍の円盤』+番外編|決定的にストーリーが弱すぎる

ポケモンDLCの後編と番外編をクリアした。

前編『碧の仮面』については正直あんまり好きな話とは言えず、後編で挽回されるかなーと期待はしていたんだけど……残念ながら叶わずだった。

以下前編の感想。

highanddry417.hatenablog.com

 

『藍の円盤』の前半はブルベリーグ四天王への挑戦、後半はパルデアに戻りパルデアの大穴の探検という構成。

前編から持ち越されたスグリとの禍根は引き続いており、ある意味彼の挫折と立ち直りが「ゼロの秘宝」という物語の軸になっていると言える。それはそれでいいんだけど、その話運びが正直上手いとは言えず、非常にやきもきさせられる。

まず気になるのは、前半と後半で全く話の趣旨が変わってしまうところで、せっかくの新舞台であるブルーベリー学園がクライマックスには全く関係なく、途中でおなじみのパルデアに戻ることになる。本編の時から謎が多かったパルデアの大穴の真相に迫れるというのは良かったんだけど、結局テラパゴスと遭遇できたぐらいで何か大きな事実が明らかになるわけでもないし、そこにスグリの物語を絡めてくるのはちょっと話がごちゃついてしまうしで、それぞれの話は別で見たかったというのが正直なところ。希少なポケモンを捕まえようとして躍起になるという展開もオーガポンの時と繰り返しになるし、何よりテラパゴスという存在が物語を展開させるためだけのダシにすぎないような扱いを受けているのは非常にもったいないと思う。

後、引率として着いてくるブライア先生がバトルできるポケモンを一匹も持っていないばかりか、生徒を焚きつけて未知のポケモンを触らせたり戦わせたりするという超絶無能になっているのも上手くない。スグリが暴走するためにはちゃんとできる大人がいてはいけないという作劇上の理由なんだろうけど、そこら辺の幼稚園児とかでもバトルが出来るのに手ぶらでやってきて、コトが起きるとアワアワしてるだけしてるだけなのは流石に不自然すぎる。これに限らず、全部がお膳立てっぽいというか、スグリの都合の悪いように登場人物が動いている感じがずーっと拭えなくて違和感が強い。

剣盾の時のように、新しい場所を用意するならその中でまとめてくれた方が物語的にはすっきりしていいと思うんだけど、スグリの話を完結させるために無理やりテラパゴスと会わせるような形にしてしまったが故に散漫な印象になっている。正直なところ、話をまたいで語るほどスグリというキャラクターを活かせているとは言い難いので、そこまで固執しなくても良かったんじゃないかな。後編は剣盾のダクマの話みたいにバトル主体のミニストーリーみたいな形の方が自然だったと思う。

この後に配信される番外編は再びキタカミの里が舞台になるが、そんな細切れにせずとも普通に『碧の仮面』の中でモモワロウの話まで終わらせて、そこをスグリの改心ポイントとすれば丸いのではと思った。そもそも『碧の仮面』で林間学校に同行する3人の生徒がなんの特長もないモブ生徒というのも特に意味ないし、最初からネモ、ペパー、ボタンで話を進めても良かったのでは。

・前編⇒オーガポンとの出会いとともっこ討伐、黒幕モモワロウ撃破、スグリの挫折と立ち直り

・後編⇒ブルベリーグの挑戦をメインにしたバトル主体のミニストーリー

・番外編⇒テラパゴスの伝承を深堀

みたいなのが理想かも。

 

正直なところ、ポケモンの本質は対戦要素にあるわけだし、ストーリーに期待しすぎだろうという気もするっちゃするんだけど、昔からずっと好きな作品だし、キャラクターやゲーム性以上の魅力をもっと引き出してほしいとは常々思っていて、本編のストーリーに関しては良いところまで行っていたと感じてたので、DLCのこの感じでより落胆してしまった。

前編の方にも書いたけど、深いストーリーを作ろうと思ってそこに主人公が絡んで来る場合、現状の無感情操り人形のままではどうしてもほころびが出てきてしまうので、今後はいっそ『Fallout4』みたいにキャラビルドはありつつ劇中で普通に喋るキャラクターにするでも良いかなと思った。

最近『パルワールド』の台頭で『妖怪ウォッチ』の時みたいに立場を揺るがされているポケモンシリーズだけど、ストーリーだけでなくUIが他のビッグタイトルに比べても追いつけていない感じも含め、本気で今後どうなっていくのか心配になってきたかも。

【ゲーム感想】2023年やったゲームまとめ

◯ディスコエリジウム(Switch)

【ゲーム感想】ディスコ エリジウム(2019)|記憶喪失刑事の自己再生追体験 - HIGHANDDRY

 

ホグワーツ・レガシー(PS5)

【ゲーム感想】ホグワーツ・レガシー(2023)|魔法ワールドの再現度は文句無しのクオリティだけど…… - HIGHANDDRY

 

ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・キングダム(Switch)

DLCきたらまとめて書こうかなと思ってたら、気づいたら開発から出さない宣言が出されていたみたい。

『時オカ』に対する『ムジュラ』みたいに、前作『ブレワイ』と同じシステムを使った応用編みたいな形で、似ているようで全く違うゲーム体験を見せてくれるところに任天堂の底力を改めて感じさせられる。特に、空を舞台にした作品だということを全面に押し出しながら、蓋を開けてみたら全く宣伝に含まれていなかった同じくらいの広さの地下マップが存在しているというのに度肝を抜かれた。タイトルに偽りなく『ゼルダの伝説』と言える物語になっているストーリーも良くて、主人公でこそないが強烈なインパクトを残す立ち位置にゼルダがいたのも良かった。

ただ、やっぱり『ブレワイ』の鮮烈な衝撃を覚えているので、どうしても比較すると凄いゲームをやってるなというインパクトは少なくなってしまったかなぁという印象はあった。クオリティ自体は間違いなく向上しているんだけど、ムジュラほどシステムの根底が変わっているわけではないので、あくまで亜種という感じが強かったかもしれない。

 

ピクミン4(Switch)

【ゲーム感想】ピクミン4(2023)|今一番”ちょうどいい”ゲーム - HIGHANDDRY

 

 

◯7 Days to End with You(Switch)

【ゲーム感想】7 Days to End with You(2022)|言語を理解するというパズルゲーム - HIGHANDDRY

 

 

◯ Ghostwire:Tokyo(PS5)

サイコブレイク』なんかのタンゴ・ゲームワークス製作の作品で、ずっと気になっていた一作。

妖怪をテーマにしてはいるが、ホラー感はほぼなくスタイリッシュ除霊バトルみたいな内容。時空がゆがむ描写なんかは『サイコブレイク』を彷彿とさせるところもあり。渋谷をモデルにしたマップはディティールの細かさが素晴らしく、日本の都会らしいごみごみとした風景は本当に街を歩いているようで、ふらふらしているだけでも楽しかった。

操作感はシンプルで分かりやすいが、逆に言うと戦いでやれることはそれほど多くなく、敵の種類も少ないし、メインウエポンの3種の呪文(弾数の多い風属性=ハンドガン、拡散性の高い水=ショットガン、爆発する炎=グレラン)の使い分けだけではちょっと飽きる。これが一本道のゲームだったらそこまで気にならないんだろうけど、オープンワールドで隅々まで探索しようとなるとそこの単調さが目に付いてしまう。

後、一部の雑魚敵……具体的に言うとてるてる坊主と道路を泳ぐ人魚みたいなやつだが、そこまで登場頻度は高くないものの道端で不意に出てくる上に、マップの都合上ビルの隙間とかの障害物の向こうに入り込みやすく、地形を無視してちょこまか動くの攻撃が当てにくく、体力も多くてやたらと戦闘が長引くのがストレスだった。

PS5のローンチタイトルだし技術的にも発展途上なところはあったのかもだが、手放しに良作とは言えない感じではあった。

 

◯ ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(PS5)

【ゲーム感想】ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON|初めてロボットものにハマった - HIGHANDDRY

 

 

スーパーマリオブラザーズ ワンダー(Switch)

マリオといえば64から入った世代なので横スクロールにはあんまり馴染みがなく、手を出しては途中でやめてしまうことが多かったんだけど、初めてクリアまでこぎつけた。

全6コースで結構な数のステージがあるが、全部に違ったギミックが用意されているのが驚異的で、任天堂の看板タイトルたる気合の入りようを見せつけられた。毎回違った攻略法が求められるので、新しいステージに行くたびにワクワクさせられるのがうれしい。

気になったのは、ボスキャラクターがクッパJr.クッパしかいないところで、ステージはバリエーションに富んでいるのにこちらは物足りなさが残った。コースによってはボスがおらずイベントだけで終了というところも多く、ややメリハリに欠けた。まあ、初代からしてボス戦なんてあって無いようなものだったしそういう伝統なのかもだが、個人的にはコースごとの個性的なボスみたいなのはいてくれた方が嬉しい。

後、おしゃべりフラワーは普通に邪魔でした。

 

◯ Demon's Souls(PS5)

AC6の流れで、いわゆる「ソウル」系のゲームに興味が出たので、PSplusのカタログにあったこちらをやってみた。…といっても今作はあくまでフロムソフトウェアが作ったPS3版『Demon's Souls』のリメイク版で、製作はアメリカの別会社が主導しているみたいだが。

難易度は高めだが死にゲーというほど理不尽ではなく、しかし死ぬとお金兼経験値のソウルをその場に落っことしてしまうというシビアさが絶妙な難易度。動作のもっさり感は若干気になるが、そこも加味して戦うのがちょうどいい難しさになっていた。

ボスで言うと唐突に2体現れるマンイーター、ステージで言うと崖際で骸骨剣士や死神などの強力な雑魚敵と連戦を強いられる嵐の祭祀場の2番目のステージに苦戦させられた。

 

スーパーマリオRPG(Switch)

SFC版のリメイク。基本的には原典に忠実で、グラフィックを向上させつつ元の良さは失っていない感じ。通常攻撃を成功させると範囲攻撃になったり、新しく追加されたゲージ技で大ダメージや回復、バフを狙えたりと、戦闘面ではこちらが有利になるような仕掛けが増えていて快適だった。ずんぐりしたマリオのキャラデザは最初どうなんと思っていたが、すっとぼけ感が強くてこれはこれであり。まだピーチやクッパもキャラ付けが乏しい頃だったからなのか結構言動が幼いところがあるが、そういうところも加味してか、レベルアップ画面でチームメンバーが踊る演出はじめ、全体的に可愛らしい感じになっているのが平和で良かった。

気になったのは、たまに要求されるフィールド画面でのアクション操作で、斜めからの固定俯瞰視点に加えて、マリオ自体もそこまで柔軟に動けるわけではないので、狭い足場を飛び移る場面とかは思った通りに動けずストレスを感じるところも。これは原典もそうだったので忠実に再現した結果と言えるが、30年近く前のゲームなんだしそこはもう少し改善は欲しかったかな。

 

 

そんなに沢山やったわけではないが、ベストを選ぶとしたら

◯ディスコエリジウム

ピクミン4

アーマードコア6

の三本かな。どれも今まで触れてこなかったタイプで、斬新な面白さがあった。ゲーム好きではあるけど、結構趣味が偏ってた自覚はあるので、今年も色々と手を出してみたい。

【雑感】2023.12.24 M-1グランプリ2023

【出場者】

真空ジェシカ

◯令和ロマン

ダンビラムーチョ

◯くらげ

モグライダー

ヤーレンズ

マユリカ

さや香

◯カベポスター

◯〈敗者復活〉シシガシラ

 

2015年に復活して以降、チャンピオンに選ばれるコンビに何かしらのドラマ性が生まれているM-1(例外は正統派コンビのガチ殴り合いになった2016くらい?)で、感動路線を突き進むM-1自体を腐しながら妬み嫉みを撒き散らしたウエストランドが去年の王者になったわけだけど、力強い情念で場を支配したウエストランドから一転、理論的にM-1を“攻略”した令和ロマンが優勝したのが、感動とは最も遠いチャンピオンという意味では昨年と地続きになっているような形だったのが面白かった。

 

近年特に盛り上がりを見せているM-1グランプリだけど、今年は敗者復活戦からインターバルなしで本戦に突入し、約7〜8時間近くぶっ続けで漫才を見せられ続けるという盛り沢山な内容で、前後の番組を含めたら12時間くらいM-1漬けにされるという凄い一日だった。今回は当日も仕事なく翌日も休み取れたから別に良かったけど、そうじゃなかったらなかなかキツかった気もするから、ちょっと日程は考えた方が良いのかも。

 

敗者復活戦のルールもガラリと変えていてどうなるのかなと思ったが、出番順の有利不利や人気投票になりがちだった部分が殆ど解消された形で、結果的に観ている側もかなり盛り上がれる良いシステムになっていた。知名度的にもこれまでのルールではほぼ間違いなく上がれていなかったであろうシシガシラが上がっただけでもこのルール改定は成功だったなと思える。

 

 

以下、本戦の感想。

①令和ロマン

少女漫画で良く見る遅刻しそうな男女がぶつかる展開についてのネタ。

唯一の同年代ということもあり割と応援していたので、まさかのトップで来ていきなりビックリ。若手のホープだしここでダメでも今回顔見せで次回以降間違いなく返り咲くだろうな……とか勝手にしんみりしていたが、まさかそのまま勝ち切ってしまうとは。

どっちかというと最終決戦でやった漫才コント的なネタの方が印象強いのでしゃべくりで来るんだと驚いたが、まずつかみで観客を巻き込んで自分たちの空気にした上で、ラフなお喋りみたいなネタで自分たちの性格をしっかり印象付けることで後のネタにも入りやすくしてると考えると流石の戦略という感じ。今大会で最終決戦まで残れると確信していたわけでは無いと思うが、錦鯉みたいに初出場で勝ちきれなくてもそのキャラクターを浸透させるのって大事だと思うし、十分その役目を果たしたネタだった。

 

②シシガシラ(敗者復活)

シシガシラのネタの中では良く見る合コンのネタ。コンプライアンスの中で配慮されていくものの中で何故かハゲだけが掬い取られないという一風変わったハゲ弄りだが、結構変則的なイジリが多いシシガシラの中では割とオーソドックスなネタで、ちょっとインパクトに欠けるところがあったのかなと思った。

松ちゃんの講評で「つかみのハゲ弄りが面白すぎて、ネタもハゲだったのがイマイチ」みたいなことを言ってたけど、だからこそ敗者復活でやってた、ハゲと口に出さずにイジるというカラオケのネタをやってたら爆発してたんじゃないかなーと思うとかなり勿体ない。アフタートークで、ダンビラムーチョモグライダーが歌ネタなので遠慮したというエピソードを語ってたけど、そんなの考えずにインパクトで後の2組にダメージを与えた方が良かったのか、大会のバランスを考えて選ばなかったのが番組にとって良かったのか、悩ましいところかも。

 

さや香

優勝候補筆頭が三番手で登場。

ホームステイを受け入れる事にした石井が緊張するので直前で飛ぼうとする……というネタ。去年の免許返納と同じく石井の異様な発言に新山がブチギレつつ、ボケツッコミの立場も二転三転するというスタイル。

個人的には三連単で3位につけていて、まあハズレはないだろうと思ったけど、思っていた以上にハマらなかったかも。もちろん細かいワード選びとか面白いし、構成も文句ないんだけど、新山がギアを上げるのが早すぎる感じがして、初っ端の「エグい」連呼とか、顔面をグーン近づけるツッコミを序盤でやったりとか、最初からそんなに怒ることある?と思ってしまった。

得点はかなり伸びて、邦ちゃんがまたバグって98点付けたりしていたが、松ちゃんだけ令和ロマンから1点下げて「令和ロマンには負ける」とハッキリ口に出したところの採点のブレなさに痺れた。優勝候補でもちゃんと80点台付けられる人は貴重よな。

 

④カベポスター

学校に伝わるおまじないについてのネタ。

去年の大声大会のネタは綺麗な構成の良いネタだったけど、ほっこりエピソードという感じがもう一つハマらないところだったんだけど、今回は終始核心を突かないのに嫌な事を言い続けるという性格の悪いネタで良かった。こういうネタの方が永見の優しそうなのに目の奥が笑ってない雰囲気にあってると思う。

邦ちゃんが昨年から10点も上げててオイオイと思ったけど、よく考えると昨年も老人イジリの真空ジェシカに高得点付けてたので、こういう悪いネタが好きなのかと思うと意外とブレてないのかもしれない。

 

マユリカ

倦怠期の夫婦のネタ。

何故か常に顔面蒼白なボケの阪本とやかまし女形の中谷の掛け合いが楽しいいつものネタで、何のネタ見ても面白いコンビな気がする。

安定はしてると言えばしてるけど、めちゃくちゃ刺さる感じも個人的には無いかも。倦怠期の夫婦という設定だけど、それっぽいのは最初くらいで、いつの間にか離婚するという話になってたりと、流れがごちゃついていたような。むしろネタを降りた後の平場のやり取りの達者さの方が最高に面白くて、バラエティ適正はめちゃくちゃ高いんだろうなと思った。

ボケの一つ「ズッキンズッキンプッチン不倫」がめちゃくちゃ滝音のワードっぽ過ぎて気になった。

 

ヤーレンズ

変な大家さんのネタ。

とにかく小ボケを連発するM-1っぽいスタイルのネタで、拾う拾わない問わず延々とボケ続ける数打ちゃ当たるみたいな手数の多さが凄くて、点数伸びるのも納得。このタイプ、ノンスタイルとかインディアンスに似ていて、その二組は個人的にはあんまり好きじゃないんだけど、ヤーレンズはツッコミの出井が出しゃばる感じがなくボソリと突っ込む感じが心地よく、またボケの楢原もちょけてるけど素に近い無理してない感じで喋り続けるので、そこら辺の違和感が少ないのが良いところかも。

 

真空ジェシカ

Z画館のネタ。

個人的に3年前の初出場からずっと応援しているが、もう一つ順位が伸びないのがなんとももどかしいコンビ。ボケを連発するコント漫才というところでヤーレンズとちょっと似てるところもあるんだけど、手数というよりは大喜利の質で勝負する感じで、一発一発のボケの精度だけで言ったら一番だと思うんだけど、その分刺さる人を選ぶのが伸びない要因なのかなぁ。大吉先生の審査振り返りPodcastでは去年より増えてた男性観客の笑い声は一番大きかったと言われてたし、令和ロマンが準決後に上げてたレポ動画では聞いた事ない男声のうねり笑いが起きてたと言われてたし、どちらかというと男性受けの方が大きいところがあるのかも。

M-1のネタだけで比較しても、明確に変わってきてるのが川北が割とネタ中に感情を乗せるようになってきているところで、これまでは人を食ったような飄々とした態度に終始していたところを、“B画館”を知らないガクにビックリしたり、演じる人が声を張り上げる場面があったり、昨年松ちゃんに「ボケとツッコミの声のバランスが逆」と言われたのをしっかり反映させてる感じがある。やや間延びしていた点を大吉に指摘された去年と比べてネタもタイトになっているし、我流を貫いてそうで意外と傾向と対策はしっかりしてM-1に寄せてる辺りが実は賢いコンビだなという感じ。

結果、その寄せた部分を松ちゃんと大吉先生には評価されたが、他の人はもっと奇抜なものが見たいと判断されたのかもう一歩点数が伸びず。平場で変な事ばっかりやってるからだから変なネタを見たいと思わせるのかもだが、実はそんなに奇抜なネタをやるタイプではないし(変なのもあるっちゃあるが明らかに賞レースむけではないし)、これ以上を求められるのってなかなか酷なのかも。個人的には、アリネタだが『ペーパードライバー講習』が大喜利の分かりやすさ、終盤の畳み掛けなども含めて賞レースに適してるネタなんじゃないかなーと思ってるんだけど、今更これで勝負してくるってことはないかな。実はしゃべくりネタもそれなりにあってしかも面白い器用なコンビだし、突飛なことをしてナンボみたいに思われてしまうとどんどん不利になっていくような……。そろそろファン以外にはまたかよと言われる枠になってきてしんどいところだが、いつかは最終決戦まで残って、あわよくば優勝する姿を見たい。

 

ダンビラムーチョ

カラオケの副業を始めるネタ。

何年か前の敗者復活戦で、バイト先のヤバいおじさんのネタやってたのが初見でその印象が強かったけど、去年の予選でヨーデルやら森山直太朗やらを歌いまくり、あげくふところからミニラッパを取り出して演奏したりと、歌を軸に変な事をやりまくっていたコンビ。決勝でもその異様さが何か確変を起こすのではと思って三連単予想でも2位に入れてたんだけど、結果あんまり跳ねなかった。

カラオケの伴奏部分を口でやるというのが変ポイントではあるが、それが自分の笑いのツボにはハマらず、正直に言うと全体的にどこを面白がればよいのかピンとこなかったかも。そもそも自分はカラオケにほとんど行かないし、歌ってた『天体観測』も『アイドル』もちゃんと聴いたことなくて馴染みがなかったというのもピンとこない要因ではあったが。

最初の『天体観測』を歌うのがやたらと長いという指摘に対して「それが面白いんだけどなぁ」とぼやいていて、たしかに“歌い過ぎ”というオモシロ要素は前述の森山直太朗のネタとかでもあったので分からんでもないんだけど、その割に途中で別のモードがあるみたいな話になったりとブレてる感じもいまいち。

 

⑨くらげ

色々な物を忘れてしまう杉にたいして、渡辺が次々と名前を出して確認していくと言うネタ。

去年のダイヤモンド、一昨年のももみたいな、シンプルシステム漫才枠とでもいうようなコンビ。坊主・コワモテ・アロハシャツというイカつい見た目の渡辺が何故かサンリオや口紅に異様に詳しいというところが面白いが、構成の中でそれを指摘するくだりがないのが気になった。くらげの代表作って初めて準決勝に来た時の「女心はわかんねぇけど」のネタだと思うんだけど、あちらはちゃんと「お前詳しいな」の指摘があったのに、今回は終始杉がすっとぼけているだけなので会話が産まれず一方通行で終わってしまう。最後のやり取りが数字というのもインパクトに欠けるような。

 

モグライダー

錦野旦の『空に太陽がある限り』のネタ。

一昨年の初決勝時の『さそり座の女』と同じく、歌詞の行間に勝手に意味を見出していく構成。『さそり座〜』はその年の中でも結構好きな方だったんだけど、今回はダメだったかも。まずともしげが前提条件の「錦野旦さんって面倒くさい女の人と付き合ってますよね」を甘噛みしまくって何を言ったのか分からず途中まで何してるのかが分からなかった。モグライダーとしてはともしげのアタフタがキモになるはずが、芝のターンも結構あってそこが停滞の要因になってしまっていたところ、歌詞の一節ごとにちゃちゃを入れるという形のせいで、歌ネタなのにリズムが著しく悪いところが良くなかったのかも。失敗しまくって最後に成功という流れなのに、一番最後もともしげが噛みまくって何言ってるのか分からないのに成功っぽい扱いになって終わりというのもなんか腑に落ちなかった。

 

 

以上1stラウンド。

個人的な順位はこんな感じ

真空ジェシカ

②令和ロマン

ヤーレンズ

さや香

⑤カベポスター

⑥シシガシラ

マユリカ

⑧くらげ

ダンビラムーチョ

モグライダー

 

全体的に尻下がりな感じというか、途中から妙に客が重くなったように思えたが、最終決戦の令和ロマンがまた爆発していたところを見ると、ボーダーにいた令和ロマンに落ちて欲しくないという気持ちが潜在的に観客にあったのかなぁと思ったり。今年のキングオブコントでも、三番手で3位になったや団が結構ギリギリまで残ってたということがあったけど、そういう基準点を作らざるを得ないような印象深さを一番手で弾き出してしまった令和ロマンが場を掌握する力があり、さや香ヤーレンズ以外はネタの良し悪しとは関係なくそれを打ち破る空気感を作り出せなかったということなのかな。

結果、1本目とは違ったテイストの強ネタを持ってきた令和ロマン、同系統のネタで勝負したヤーレンズ、珍妙な『見せ算』で勝負を賭けたさや香の戦いで、令和ロマンが優勝したわけだけど、見せ算もひょっとしたら爆発する可能性を秘めたネタでもある?し、どこが勝ってもおかしくはないかなと思った。だからこそ、真空に行って欲しかったところはあるが……。

霜降りとはまた違った方向性でお笑い勢力が変わりそうな若手である令和ロマンの優勝で、今年一年お笑い界がどうなっていくのか、そして今年から一新された予選審査員が小慣れてきて来年どんなジャッジをするのかでまた大会の雰囲気も変わってきそうだし、本当に令和ロマンが連続出場するのであればまた荒れそうだしで、来年のM-1がどうなっていくのか、なんだかんだ楽しみ。

【雑感】2023.12.10 THE MANZAI2023マスターズ

恐らく初めて?Tverで見逃し配信がされていたので、久しぶりに見てみた。

印象に残った組を記録。

 

アンタッチャブル

「娘さんをください」のネタ。

よくやってるイメージだけど、毎回重要なくだりを除いてまるで違うネタになっていてすごい。二人羽織の下りとか、柴田が何やってるかわかってなかったっぽいので他もほぼアドリブってことなのかな。

昔地元でお笑いライブ見に行ったときにもアンタッチャブルが出てて、その時もザキヤマがネタに関係ない下りを一生やり続けて柴田が発狂するみたいなことやってて腹千切れるくらい笑った覚えあるんだけど、未だにそういうことやってるのがすごいし、つくづくコンビ復活してくれてよかったなと思う。

 

タカアンドトシ

ネタやってるの久しぶりに見たが、キレはそのままで大御所みたいな余裕があってなんかすごかった。…って書いて思ったけどもう普通に大御所か。タカとか未だに『有吉eee』で末っ子みたいな扱いされてるイメージが強いから、漫才でしっかりしてるとギャップにびっくりする。

 

・錦鯉

結婚の挨拶のネタ。

これも見たことあるネタだったけど、まさのりさんが疲れてるのか普段に比べて微妙にテンションが低くて、それが却って面白かった。ダウナーなバカおじさんという新ジャンル。

 

ウエストランド

去年のM-1のネタもそうで、基本悪口をいう井口が頭のおかしい奴という作りになっていて、上からマウントを取るんじゃなくて狂人が喚き散らしているみたいな形になっているのがイヤミっぽくなくて良い。今回もネタ中に完全に正気を失っていくのがおかしくてしょうがなかった。

 

ギャロップ

the Second獲るまであんまり注目してなかったけど、じっくり見てみるとめっちゃ面白い。ウエストランドと同じく世間を皮肉るようなネタだけど、言葉の端々に込められる毒のワードセンスとかジワジワ笑えてしまう。

 

マヂカルラブリー

道で轢かれそうな子供を助けたいのネタ。

これも見たことあったと思うんだけど、当時の印象よりずっと面白かった。見たことないくだりが追加されてたからってのもあるんだろうけど、5分尺になってよりしつこくなってたのが良かったのかも。

 

霜降り明星

いつものパターンのネタとは全く違う、お互いのスキャンダルをイジるようなネタ。一番若手ながら、ここまで仕上げられるようなキャッチーなネタ(と言っていいのか)が沢山あるのが凄いよなぁ。