【ゲーム感想】Bloodborne|作り上げられた強固な世界観と、それを押し付けてこない謎めいた佇まいがたまらない。ゲーム性も良くて文句なし。

アーマードコア6』からフロムソフトウェア作品に興味を持って、リメイク版『デモンズソウル』を経て『Bloodborne』をプレイしてみた。リメイク版『デモンズソウル』は原作にほぼ忠実らしいが製作は外注みたいなので、本流の“ソウルボーン”シリーズは初ということになる。

 

経験値とお金が同じ単位で括られており倒されるとその場に落としてしまうとか、オンラインプレイをしていると他プレイヤーが残してくれたメッセージをヒントに進められるとか、ざっくりとしたシステムは『デモンズ』と似たところがありとっつきやすかった。

ただ、操作感はだいぶ違い、特に戦闘面では盾で敵の攻撃をはじきながらこちらの攻めの機会をうかがう『デモンズ』とはうって変わって、基本的に防御という選択肢は無く相手の攻撃をステップやローリングでよけながらスキをついて攻め続けなければいけないので、雑魚敵のと遭遇でも常に緊張感があった。防具も種類こそあれど性能の差は微々たるものなので、重装備で固めるということも出来ず、必然的にダメージを受けやすくなるが、一定時間内に反撃できれば「リゲイン」というシステムである程度回復を行うことが出来るので、まさに肉を切らせて骨を断つみたいなプレイスタイルが要求される。この血で血を洗うような戦闘が、「血」が重要な要素となる今作の世界観とマッチしていてよかった。

武器についても良くある剣や斧とは少し違う「仕掛け武器」になっていて、すべての武器が2種類の形態をとれるというのも個性的。振りが早く短いノコギリとリーチが長く振りが大きい鉈形態を切り分ける「ノコギリ鉈」、軽いステッキを変形させるとノコギリ状の鞭になる「仕込み杖」、直剣に巨大な鞘を装着して大剣に変化させられる「ルドウイークの聖剣」など、どれも武器の性質がガラッと変わるような変化を見せてくれて、変形するときの「ガシャン!」みたいな無骨な音も含めて少年心をくすぐられる格好良さがある。個人的には初期武器でもあり手数と威力が優秀な「ノコギリ鉈」、癖のない動きで相手を怯ませる重打が出せる「ルドウイークの聖剣」をメインで使っていて、DLCゾーンに行ってからはチェーンソーみたいに回転する丸鋸が先端についた「回転ノコギリ」、敵モンスターであるアメンドーズのもげた腕というとんでもない設定でなぜか壁抜けして攻撃が出来る「小アメンの腕」をメイン武器として切り替えながら使っていた。

前述の通り雑魚敵もなかなかの手ごわさがあるが、ボスは輪をかけて難しいところがあり、基本的に遠距離からちくちくやるような戦法は不可能なので、どうしても相手の攻撃射程内に潜り込まなければいけず、自分の何倍もの体躯がある敵に死ぬ気で挑まなければいけないという恐ろしさがある。特に獣系のボスは動きも素早く攻撃範囲が大きい上に、序盤で戦う機会が多くてなかなか苦戦させられた。一個罠だなと思ったのが、ゼルダみたいに敵にロックオンできる機能があって、自動でカメラが追いかけてくれるので便利ではあるんだけど、ロックオンしてる間はダッシュやローリングが出来なくなるという仕様があり敵によっては逆に攻撃が除けづらくなってしまうことがある。特に序盤の壁になったのが「黒獣パール」で、めちゃくちゃに動き回ってカメラがぶん回されるばかりか、身体がガリガリすぎて攻撃が空ぶることが多くかなり苦戦した。ロックオンのもう一つの落とし穴として、視点が固定されることにより攻撃の方向もある程度決まってしまうので、自分の思うような位置に攻撃できなくなることがあり、手足などを重点的に狙いたい敵にはあえてロックオンせずに自分でカメラ操作をした方がやりやすい。パールはそういうロックオンすると戦いづらいという仕様の穴を絶妙に突いた設計になっていて、ある意味チュートリアル的な存在だったのかも。他のボスでも、困難絶対勝てないじゃんと思うようなやつにもただ同じ方向にステップするだけで驚くほど簡単になったりする等どこかしらに隙があり、厳しい戦いでも攻略の楽しみがあった。

ただそれでも戦闘に癖があるのは否めないところで、早々にあきらめる人が多いのか最初のボスである聖職者の獣orガスコイン神父の討伐トロフィーが自分のクリア時点で45%くらいで、ハードルの高さを感じさせられる(ボス戦というよりそこにたどり着くまでの市街地で心折れる人が多いのかもだが)。

因みに、自分が苦戦した順をTier表にしてみるとこんな感じ。

こう見ると、ストーリー上絶対に戦わなければいけないボスよりも、DLC含め寄り道にいるボスの方が手ごわく設定されているのかなと思った。A以上に入れて戦闘必須なのは「再誕者」のみだけど、こいつはちょっかいだしてくる周囲の取り巻きを倒せることにしばらく気付かず戦ってたのが苦戦の要因だったので、単体での強さで言ったらもう少し下がるかも。

聖杯ダンジョンのボスは大体厄介で、大小問わずモーションが独特で読みづらくて攻撃をよけるのに苦労する場面が多かった。アメンドーズなんかは本編の「悪夢の辺境」では訳も分からず足元の安置に入り込めてしまい初見突破できたんだけど、聖杯ダンジョンである「呪われたトゥメルの冒涜(HPが強制的に半減)」に出たときは一撃の痛さも相まってかなり苦戦させられた。中でも一番嫌だったボスはトゥメルの末裔で、見た目はただのちょっとでかい爺という感じなんだけど、異様に早いモーションと見た目以上に長い判定で曲刀を振り回し、当たらないように距離を取ると壁を貫通する上に多段ヒットで体力をゴリゴリ削られるブーメランを無限に投げてくるなど隙が無さすぎる。出現場所がこちらの攻撃と回避を邪魔する柱がたくさん立っている狭いエリアで、思うように動けずなぶり殺しにされ続けて狂いかけた。多分リトライ回数で言ったらこいつが一番なんじゃないかと思う。

ボスじゃないが、DLC漁村のモブ敵である巨大魚人もインパクト大。雑魚敵扱いなのでリスタートのたびに復活するのに規格外の強さで、インチキじみた範囲と持続時間の突進攻撃と、致死量のダメージを受ける掴み⇒丸呑み攻撃がきつ過ぎて何度も辛酸を嘗めさせられた。でかい図体のわりに銃パリィが良く効くのでそれに気づいたら安定したが、こんなのを道中に配置するなんて正気かと愕然した。

 

プレイの面だけで色々書いてしまったが、世界観もまた素晴らしかった。

主人公は訳も分からず世界に放り出され、とりあえず「獣狩りの夜」を終わらせることが目的であるということを何となく教えられて話を進めていく。街をうろつく敵は半分獣人化したかのような凶暴な者ばかりで、大体のボスも巨大化したオオカミの様な姿をしており、プレイヤーはその名の通り「獣狩り」をすることになる。街並みも含めてどことなく吸血鬼や狼男のようなゴシックホラー的な要素を強く感じさせられるが、一番目の目的地だった聖堂街の大聖堂に陣取るボス「教区長エミーリア」を倒してから徐々に様子がおかしくなってくる。

決定的なのはその次のエリアである「禁域の森」で、それまでのある程度整った街並みから一転、道らしい道の無い森の中を進んでいくと、人間の身の丈に合わない巨大な墓石が乱立していたり、蛇の様な生き物を頭から生やした人間がうろつくなど雰囲気が様変わりしてくる。一番驚かされたのは森の奥の方の脇道に立ち寄ると突然全身真っ青のグレイ型宇宙人の様なものが現れるところで、その別のゲームからやってきたんじゃないかというほどのあまりの世界観の違いに衝撃を受けてしまった(そして謎の神秘攻撃で一瞬で殺される)。ここから徐々にゲームの方向性自体が変わっていき、マップ間の移動が物理法則を無視したかのように繋がりが無くなり奇妙なところに飛ばされたり、敵もドロドロに溶けた人間やこの世の者とは思えない姿をした虫など薄気味悪い造形のものが増え、何が現実で何が幻なのかが曖昧になってくる。ここで大聖堂で見た蛸のような頭をした謎の石像や、宇宙人の様な敵の存在、冒涜的ともいえる恐ろしいボスの造形が頭の中でつながり、今作の本質は『クトゥルフ神話』のような“コズミックホラー”であることが分かってひっくり返りそうになった。それまで訳も分からず溜まっていた「啓蒙」のステータスがいわゆる「SAN値」に近いというのもそこでようやく分かり、何やらぼんやりしていたものが急にハッキリと見えてくるという、深入りすることでおぞましい本質の部分が見えてしまうというクトゥルフっぽさをプレイヤーである自分自身が体験させられる感じが上手くて舌を巻いた。『デモンズソウル』が割と王道な剣と魔法のダークファンタジーだったし、そんなトリッキーなことをしてくるだろうとは夢にも思わなかったのでやられたなーと思った。

とはいえ、劇中では明確にそういう世界であるという説明があるわけではなく、アイテムのフレーバーテキストやほんの少しのムービー、断片的な会話などからある程度推察していくしかない。『デモンズソウル』も全体的なストーリーは明確に語られるものではなかったが、今作は輪をかけて描写が無く、クリアした後に振り返ってみても結局主人公が何を成し遂げたのかが良く分からないレベル。調べると山ほど考察系サイトが出てきて、色々な見解を見ることが出来て楽しい。説明不足と言われればそうなんだけど、しっかりと作りこんだ上であえてその核心を見えないようにして、細かい要素だけを小出しにすることでプレイヤー側に考える楽しみを与えてくれるのが良い。映画とかでもそうだけど、1から100まで説明されないというのは作り手側がこちらを信頼してくれいているような気がして嬉しい。

何故こんな世界になっているのか?というところはDLCのエリアに足を踏み入れてようやく輪郭が見えてくるが、ここら辺も核心に迫るにつれてどんどん狂気がむき出しになっていき、精神力が削られていく感じがした。『実験棟』は気が狂った患者型エネミーたちが不気味で、話が出来るタイプのモブも全く会話が出来ないので頭がくらくらしてくるし、次の『漁村』は単純に自分が水辺が苦手ということもあり、フジツボがびっしり生えた廃墟など生臭くて不潔そうなロケーションが単純に嫌だった。しかし、様々な狂気じみた地を巡った挙句、最果てに待ち受けているステージの名前が『漁村』という素っ気無さなのもまた痺れるね。

 

前述の通り最初のボスのトロフィー取得率はだいぶ低めだが、プラチナトロフィーは比較的取りやすくなっていて(取得率6%くらい)、初めてトロコンまでしてしまった。

(厳密に言うと『UNDERTALE』でも取ってるんだけど、あれはストーリー一周するだけで勝手に取れる仕様なのでノーカン)

周回は必要だけど慣れれば1~2時間くらいでエンディングまで行けるし、○○を何回しろとか果てしない数のアイテムを集めるみたいな面倒くさい収集要素とか、時限式ミッションみたいなものが無いので心折れずに行けた。

やりこもうと思えばまだ聖杯ダンジョンが残っていたりもするんだけど、他にもやりたい作品が渋滞してきたのでとりあえずここで一区切り。最初はDLCも買ってなかったし、トロフィーを集める気も一切なかったのにすっかりのめり込んでしまった。まだ同系統の『ダークソウル』も『エルデンリング』もあるし、開拓していくのが楽しみだ。