【ゲーム感想】SILENT HILL: The Short Message|テーマとゲーム性の融和は良かったと思うが……。

【あらすじ】

高校生のアニタは、友人のマヤに呼ばれて廃墟と化したマンションにやってくる。しかし、どこにもマヤの姿は無く、建物をさまよう内に奇妙な現象に遭遇する…というお話。

 

これまで公開されていた『2』のリメイクなんかとは別に、突如発表・無料配信されたサイレントヒルシリーズの最新作。正式に『サイレントヒル』の名を冠した作品としては、なんと2013年にPSvitaで出たものが最後らしく、11年も間が空いていたらしい。製作会社は日本のヘキサドライブという会社。

無料配布ということもあってボリュームはそこまで大きくなく、自分は2時間半くらいでクリアした。サクサク進めたらもっと早いはず。

 

若者の承認欲求・いじめ・ネグレクトなどが大きく取り上げられ、SNSコロナウイルスの流行も話に組み込まれているなど、全体的にかなり現代寄りになっていて、これまでのシリーズとはだいぶ趣が違う。トラウマに作用して変化する地形や不気味なクリーチャーといった基本は抑えているが、あの独特のサビっぽさ、血なまぐささはそこまででもなかったかな。

 

サクッと遊べてよかったと言えばよかったんだけど、大満足かと言われると微妙かも。

前述の“サイレントヒルっぽさの少なさ”については今作の個性であるとして飲み込めるんだけど、いじめとかネグレクトのような重いテーマを扱っているにもかかわらず表現がちょっと典型的すぎてチープに感じてしまった。このサイズ感で深堀りするのは難しいかなとも思うんだけど、どこかで見たような既視感のある展開でしかないなというのが正直なところ。ゲームの設定とテーマの融和性は良かったと思うので、もうちょっとがっつり練りこんだストーリーが見てみたかった。

後、演出面でも気になるところがあり、主要人物であるマヤ(日系人)が出てくるムービーは全部実写映像になっているんだけど、日本人の役者さんが演じており、口元を見るとあからさまに日本語をしゃべっているのが見て取れる(音声は英語吹替)。このゲームの舞台はドイツで、主人公も恐らく現地の人なので会話上マヤだけ日本語で話してるのは変な気がするんだけど、特に説明はないまま。恐らく予算的な問題でマヤのキャラクターモデルが作れず(ゲームで出てくるのは主人公アニタとクリーチャー1体のみ)実写で撮影し、わざわざ英語やドイツ語を喋らせる手間も取れなかったということなんだろうけど、常に違和感が拭えなかった。

LINEみたいなチャットでやり取りする場面も多いが、スマホ画面をババンと出されると急に現実に引き戻されてしまったみたいで、なんだか興を削がれてしまった。

 

個人的に、ホラーはドライであればあるほど良いと思っているので、終始湿っぽい話続きの今作はあまり性に合わなかった。これぐらいの規模感で、乾いた恐怖をとことん味わうことの出来る作品というと、自分はプレイ出来なかったがそれこそ『P.T.』なんかは理想に近い形だったかも。