【ゲーム感想】splatoon3 DLC『サイドオーダー』|スプラ×ローグライトという新しいジャンル。面白い試みで楽しめたがもっと良くなる余地はありそう。

splatoon3のDLC第二弾。第一弾が拠点マップの衣替えだけだったので、ようやくメインがやってきたという感じ。ストーリー的には『splatoon2』のDLC『オクト・エキスパンション』の続編になっていて、主人公はタコの8号(通称:ハチ)で、深海メトロにて“ネル社”の陰謀を阻止した後のお話しになっており、2~3のヒーローモードでの出来事などは全く関係ない。

 

全体的な評価としては、面白いがもっと良くなる余地は見えてしまう、という感じ。

これまでの一人用モードは自分でステージを選択してクリアしていくものだけだったが、今作では塔を登っていくというていでワンフロアずつ攻略していく形になっており、ステージはランダム抽選で失敗したら1からやり直しになるといういわゆるローグライト方式というスプラとしてはかなり斬新な試み。「チップ」という強化パーツを使って自身の能力値を高めたりお助けアイテムを出やすくすることで有利に進めることもできるが、クリアするかゲームオーバーになった時点でそれらはすべて失われてしまう。ただ、救済措置もあり、塔内で集めたアイテムがリザルトで「シンジュ」という通貨に換算されて、それを使ってリセットされない基礎能力を高めることでクリアしやすくすることもできる。デフォルト能力だとなかなかの難易度なので、物足りない人は強化しないという選択肢を残しているのは良い塩梅だなと思った。

何度もトライを繰り返すためか、これまでに比べるとかなりステージはコンパクトになっていて、上手いこといったら十数秒でクリアできてしまうものもあったりする。中には『オクト~』でもなかなか難易度が高かったボール運びのお題もあるが、ステージ外への落下が無くなっているのでかなり軟化しているなど、良くも悪くもシンプルなつくりと言える。ステージが狭いので高難易度になってくると敵がひしめき合うことになるが、これはサーモンランの要素も取り入れた結果なのかなという感じがした。言われてみればサーモンランって一人用向きの題材だし、今までなかったのが不思議なくらい。

武器の強化という要素はこれまでもあったが今作ではそれを極端にしていて、ビルド次第では爆速で走り回って敵をなぎ倒すフデとか、一瞬でチャージ完了してぶち抜きまくれる無敵のチャージャー等、対戦ではお目にかかれないチートみたいな武器が出来上がっていくのが楽しい。これもサーモンランの「クマブキ」に近いものがあるが、あれ以上に尖った性能に出来るのが楽しい。お供してくれる「ヒメドローン」の能力を上げまくったり、敵のドロップアイテムを増やして常に有利な状況にしたりとビルドの幅はある程度あるが、基本的にはその武器の長所を伸ばしていく強化にするのが一番楽しいかなと思った。これまでの一人用モードは一本道のストーリーがありそれほどリプレイ性のあるものではなかったので、試行錯誤しながら楽しめるという要素があるだけで新鮮で面白かった。

 

雑魚敵の種類に関してはそこそこいるが、ボスが3体+ラスボス1体というのはやや少なく感じる。武器が強くなるからこそいろいろな戦術を試したくなるし、使いまわしとかでも良いからもう少し増やしてくれたら嬉しかった。ステージのクリア条件も「敵を召喚するポータルの破壊」「エリア奪取」「プロペラヤグラの運搬」「ボール運び」「逃げる敵の撃破」の5種類で、もう少し幅が欲しかったところ。ラスボスも攻略法さえつかめればそこまできつくないので、もう一個踏み込んだ強敵・難ステージが遊べるようなエンドコンテンツがあっても良かったかなとも思う。

前作『オクト・エキスパンション』はvaporwaveなどのサンプリング的文化を取り入れたかなり特殊な世界観で、深海メトロ内の奇妙な住人達の佇まいも相まって退廃的な雰囲気がありかなり良い空気感だったんだけど、今作では極端な“秩序”を表すかのような無機質な世界になっており、ステージやNPCなどの造形に遊び心が感じられなかった(ステージの背景は実は結構凝っているんだけど、敵がわんさか出てきて忙しい時間が多いので、意図的に入り口で立ち止まったりしないと眺めている余裕がない)。

ストーリーもやや薄味で、全容は一週目で大体明らかになったのちに周回ごとに徐々に骨組みが明らかになっていく形だが、あくまで舞台となる世界だけの話に終始し、『オクト・エキスパンション』の後日談的側面が強くあまり広がりがない。結局大きな出来事が起こるわけではないので、他の一人用モードと比べるとこじんまりとした印象を受けた。

 

単なる拡張版ではなく全く新しい体験としてスプラトゥーンの要素をローグライクとして落とし込むという発想は面白いし、実際上手いこと融合して良い作品にはなっているんだけど、だからこそもっと叩いてより良いものになってほしいという欲求が生まれてしまった。例えば『4』とかでパワーアップした同モードが『サーモンラン』みたいに常設で遊べたりしたら嬉しいけど……さすがに望み過ぎかな。