前編『碧の仮面』については正直あんまり好きな話とは言えず、後編で挽回されるかなーと期待はしていたんだけど……残念ながら叶わずだった。
以下前編の感想。
『藍の円盤』の前半はブルベリーグ四天王への挑戦、後半はパルデアに戻りパルデアの大穴の探検という構成。
前編から持ち越されたスグリとの禍根は引き続いており、ある意味彼の挫折と立ち直りが「ゼロの秘宝」という物語の軸になっていると言える。それはそれでいいんだけど、その話運びが正直上手いとは言えず、非常にやきもきさせられる。
まず気になるのは、前半と後半で全く話の趣旨が変わってしまうところで、せっかくの新舞台であるブルーベリー学園がクライマックスには全く関係なく、途中でおなじみのパルデアに戻ることになる。本編の時から謎が多かったパルデアの大穴の真相に迫れるというのは良かったんだけど、結局テラパゴスと遭遇できたぐらいで何か大きな事実が明らかになるわけでもないし、そこにスグリの物語を絡めてくるのはちょっと話がごちゃついてしまうしで、それぞれの話は別で見たかったというのが正直なところ。希少なポケモンを捕まえようとして躍起になるという展開もオーガポンの時と繰り返しになるし、何よりテラパゴスという存在が物語を展開させるためだけのダシにすぎないような扱いを受けているのは非常にもったいないと思う。
後、引率として着いてくるブライア先生がバトルできるポケモンを一匹も持っていないばかりか、生徒を焚きつけて未知のポケモンを触らせたり戦わせたりするという超絶無能になっているのも上手くない。スグリが暴走するためにはちゃんとできる大人がいてはいけないという作劇上の理由なんだろうけど、そこら辺の幼稚園児とかでもバトルが出来るのに手ぶらでやってきて、コトが起きるとアワアワしてるだけしてるだけなのは流石に不自然すぎる。これに限らず、全部がお膳立てっぽいというか、スグリの都合の悪いように登場人物が動いている感じがずーっと拭えなくて違和感が強い。
剣盾の時のように、新しい場所を用意するならその中でまとめてくれた方が物語的にはすっきりしていいと思うんだけど、スグリの話を完結させるために無理やりテラパゴスと会わせるような形にしてしまったが故に散漫な印象になっている。正直なところ、話をまたいで語るほどスグリというキャラクターを活かせているとは言い難いので、そこまで固執しなくても良かったんじゃないかな。後編は剣盾のダクマの話みたいにバトル主体のミニストーリーみたいな形の方が自然だったと思う。
この後に配信される番外編は再びキタカミの里が舞台になるが、そんな細切れにせずとも普通に『碧の仮面』の中でモモワロウの話まで終わらせて、そこをスグリの改心ポイントとすれば丸いのではと思った。そもそも『碧の仮面』で林間学校に同行する3人の生徒がなんの特長もないモブ生徒というのも特に意味ないし、最初からネモ、ペパー、ボタンで話を進めても良かったのでは。
・前編⇒オーガポンとの出会いとともっこ討伐、黒幕モモワロウ撃破、スグリの挫折と立ち直り
・後編⇒ブルベリーグの挑戦をメインにしたバトル主体のミニストーリー
・番外編⇒テラパゴスの伝承を深堀
みたいなのが理想かも。
正直なところ、ポケモンの本質は対戦要素にあるわけだし、ストーリーに期待しすぎだろうという気もするっちゃするんだけど、昔からずっと好きな作品だし、キャラクターやゲーム性以上の魅力をもっと引き出してほしいとは常々思っていて、本編のストーリーに関しては良いところまで行っていたと感じてたので、DLCのこの感じでより落胆してしまった。
前編の方にも書いたけど、深いストーリーを作ろうと思ってそこに主人公が絡んで来る場合、現状の無感情操り人形のままではどうしてもほころびが出てきてしまうので、今後はいっそ『Fallout4』みたいにキャラビルドはありつつ劇中で普通に喋るキャラクターにするでも良いかなと思った。
最近『パルワールド』の台頭で『妖怪ウォッチ』の時みたいに立場を揺るがされているポケモンシリーズだけど、ストーリーだけでなくUIが他のビッグタイトルに比べても追いつけていない感じも含め、本気で今後どうなっていくのか心配になってきたかも。