【ゲーム感想】ドラゴンクエストⅢ(HD-2D版)|“ドラクエ”というブランドに胡座をかいてない?

今年発売されたHD-2D版リメイクの『ドラクエⅢ』。ドラクエシリーズは4〜6,9,11と飛び飛びにプレイ済みで、ロト三部作は始めてだったので良い機会だと思ってやってみた。

11がもう7年も前なのでかなり久しぶりのドラクエで、こういう古くからのRPGならではのゆったりとしたテンポ感はノスタルジックで良かったし、新たに作り上げられた美麗な背景とドット絵のキャラクターは結構上手く馴染んでいて、なかなか良リメイクなんじゃないかなぁと思っていた。……最初は。

 

そもそも原作がファミコン時代のゲームで、少ない容量をやりくりして壮大な物語を描いたというところが名作と言われる所以なんだと思うんだけど、今作はグラフィック以外のその当時の会話やイベントをほぼそのまま持ってきているようで、今プレイすると正直物凄く淡白に感じられる。そりゃファミコンでこれがプレイできたらすごいとされるのは分かるんだけど……。

特にアレフガルドの地に降りてからが薄味さが顕著で、何のドラマもなく適当にあてがわれる船、牧場の隅っこに馬のフンみたいなノリで落ちているオリハルコン、“やる気がないから”という理由だけで施設がほぼ運営していない虚無の町など、容量不足が故の簡略化された要素をただそのまま繰り返しているだけで、それを何の肉付けもされずにそのままお出しされるというのは正直手抜きなんじゃないかと言わざるを得ない。

例えば別作品だが『ポケモン金・銀』なんかでも、今作と同じように後半は別の土地で冒険できるという要素がありつつも、容量の関係で後半はかなりシンプルになっていたが、そのリメイクである『ハートゴールドソウルシルバー』ではきっちりテコ入れがありイベントや消えた施設の復活などしっかりと時代に即してアップデートされていたので、そういうリメイクとしての志しが全く感じられないのが残念だった。

一応追加ボスがいたり、父オルテガの回想エピソードが追加されたりはしているようだが、追加ボスだから何か面白い戦法を使ってくるとかいうこともないし、オルテガの話も取り立てて物語に深みをもたらすようなこともなかったので、リメイクならではの良いところかと言われるとそうではない、水増し程度の追加要素に思えた。仲間のキャラメイクのバリエーションやボイスの追加に関しても、そもそも会話もなく戦闘アニメーションもないのであまり活きてこないのが勿体ない。

 

ユーザビリティの面では、ルーラがどこでも使えるようになり町以外のダンジョンなどにも飛べるようになったのが移動の煩わしさを大きく低減していて良かった。戦闘を高速化出来るのも、基本戦闘しかやることのない今作では地味ながら嬉しいところ。

ただ、この移動面にも問題があり、ルーラで行けないところは当然徒歩その他の移動手段で向かうことになるんだけど、そのどれもがやたらと動きが遅く、広い世界を動き回ろうという気になれなかった。海を移動できる船は一応加速機能はあるが、加速度が悪くもったりとしたスピードアップしかできない上に、落ちているアイテムを拾ったりメニューを開いたりする度に速度が戻ってしまうのがかなり煩わしい。空を飛ぶことができるラーミアは物語の佳境で満を持して現れるが、こちらもびっくりするくらい遅くて飛び出した瞬間誇張なしにひっくり返りそうになった。名曲”おおぞらをとぶ”のテンポにあっているといえばあってるんだけど、船にはある加速すらなく移動手段としては致命的に遅すぎる。なぜか飛び立つと画面上のミニマップと現在位置がずれて場所が分かりにくくなるのも不便。まぁ、実際クリアに向かうだけならルーラが便利なのでそこまでこれらの移動手段を使い続けることはないんだけど、このゲームには収集要素があるので、それらに手を出すとなると使わざるを得ないのでもうちょっと何とかしてほしかった。

 

ドラクエというゲームシステムの面白さがあるのでやっているうちはもちろんある程度楽しくはあったんだけど、この時代に蘇らせるにしては余りにもゲームシステムに関してノータッチ過ぎて、正直”ドラクエ”というブランドに胡坐をかいているんじゃないかと言いたくなってしまうような作品だった。RPGのシステムを変えるのはかなり難しいというのはわからんでもないけど、有名タイトルとしてこちらを驚かせるような仕掛けがもっと欲しかったかな。